『岩合光昭の世界ネコ歩き』では、日本そして世界の街角や風光明媚な大自然に暮らすネコを訪ね、その愛らしい表情、野性的な行動の数々を映し出していく。

 「撮影は楽しいけれど、本当に大変です。毎回実質9日間で撮影しますが、“まだ1時間分にならないぞ”というときは焦りますね。想定していたネコが1分も撮れなかったこともあって、そのときはまいったなと頭を抱えました。ロケハンのときにいたネコが姿を消していなくなっちゃったり。そういうときは“途中のあそこにも確かネコがいたよな”とか、道行く人に“ネコ知りませんか”と聞いたり急遽別のネコを撮影します。放送しているのはたくさん取材しているうちのごく一部です(笑)」

 このように、世界各地でネコを撮り続けている岩合さんがこのほど『ネコへの恋文』というエッセー写真集を出版した。

 「表紙の写真は、宮城県田代島の親子のネコです。島にはネコたちに卵ご飯ををあげているおばさんがいるんですが、その近くで撮りました。最初、子ネコだけが遊んでいたので、このコはかわいいなーと思って写真を撮り始めたら、ご飯の時間になって親ネコたちも集まってきたんです。同じ模様の猫が来たので見ていたら、クルッと丸くなって授乳を始めたので、あ、まさに親子だなと思いましたね。

 写っているのは、“甘える”という、子ネコにとって大切な命の凝縮の瞬間です。子ネコが生きていくためには、母ネコとのやりとりがすべてなんですよね。母親のニオイをかぐと、今日の機嫌のよさ、今日は何を食べてきたのか、まだ食べていないのか、そういうことを一瞬で判断するわけです。だから甘えるというのはけっこう重要な行動なんですね。またお母さんのひげが前に出ているのは、お母さんも子ネコのことを探ろうとしているんです。こうやって子ネコの体調をみているんでしょうね」