ネコ好きの多くの人が、どうしたら岩合さんのような写真が撮れるのか、と思うことだろう。ネコを撮る秘訣はあるのだろうか?

 「ネコに限らず、ほかの被写体のときも、できるだけ気持ちをさぐりながら撮ろうしていますね。どういう写真を撮るかということは、自分で決めないんです。ある程度の背景や範囲は決めますが、シャッターを押すのはいつも“ネコ様次第”。ネコの動きを見ながら、発見をしていきたいと思っています。

 自分が撮りたいところにネコを置くというやり方をすると、“借りてきた猫”という言葉がありますが、自然な表情がまるで撮れないんです。だから番組でもそうですが、そこで暮らして、そこに生きているネコを撮るようにしています」

 このほど出版した『ネコへの恋文』でも、自然体のネコの様子をとらえている。

 「ちょっとふくよかな姉妹です。実はこの上にはガードレールがあって、ここは道端、後ろは海なんです。このときは坂道を歩いて上ってきたところ、“ん? 今ネコがいた気がする”と振り向いたらガードレールの下のところからネコが出てきて、カメラを向けた途端にストレッチをしました。

 ネコを探す場合は、足元から地平線まで見なきゃいけないんですが、人が多くない場所では、風景を1枚の絵として見るんです。すると1点何かが動いて、そこに目を止めて見ると、耳がぴくぴくっと動くのがわかって“あ、ネコだ”と見つけられます。けっこう遠くでもわかりますね。そういう探し方をしています」