有限な時間を大切に、「優先順位」を決めて情報収集
人生で一番大切なのは、「時間」だと思っています。今回乳がんになって、さらに強く、そう思うようになりました。時間は、無限ではなく有限です。だからこそ、迷ったり悩んだりして、生産性のない時間を過ごしたくありません。
時間を無駄にしたくないという思いが強いので、私は普段から「優先順位」を考えることが癖になっています。仕事においても、会社経営は決断の連続です。ジャッジすることは、小さなことから大きなことまで、膨大にあります。自分が転ぶだけならよいのですが、私の決断したことが、社員やその家族、お客様にも影響するので、優先順位を決めておくことはとても大事ですね。
たとえ時間をかけたとしても、ただ悩んでいるだけでは解決しません。いつか腹をくくって、決めなければいけないときがやって来ます。同じ時間をかけるのであれば、「悩む」のではなく「考える」。自分の優先順位をはっきりと決めて、必要な情報を集め、納得するまで検証するのです。私の場合、人の手を借りてブレストをすることもあります。
時には人に相談し、同じ壁にぶつかった人に学ぶ
経営者は、もともと決断力があり、誰にも相談せず一人で意思決定をするイメージがあるかもしれません。しかし、必要に応じて誰かに相談することは大切です。私は人に弱みを見せるのが得意ではありませんが、時には「こういう状況になって困っている」と相談することもあります。なぜなら私の苦手意識やプライドなんて、会社や、会社を支えてくださっている方々の得にはならないからです。
それに、人が転んだりつまずいたりするポイントは、実はそんなに多くないんです。教習所で車の運転を習う場合でも、多くの人がつまずきやすいポイントやコースは、ある程度決まっていますよね。これと同じで、自分が今ぶつかっている壁は、過去に誰かがぶつかった壁。だから優先順位を決めて、同じ道を通った方の経験を参考にさせてもらいながら、自分がどう立ち向かうのかを決めていけばよいんです。人類が初めてぶつかった壁、人類史上初めての決断なんて、ほとんどないんですから。
乳がんの場合で言うと、私の優先順位の1位は「命」でした。ですから「命」を守るために、乳がんサバイバーの方の書籍や、同じ症状・タイプの方のブログなどを、たくさん読ませていただきました。そして私にできることを考えた結果、「右乳房の全摘」という決断をしたのです。もちろん、治療方針も決断も、人それぞれです。ただ、私の経験や決断が、同じように乳がんで苦しむ人の役に立つかもしれません。そう願って、私は自分の乳がん体験を出版することにしました。
*後編は11月30日公開です。
聞き手・文/青野梢 写真/小野さやか(インタビュー)
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