今がチャンス、正社員になる

 条件にもよりますが、一生非正規の場合と一生正社員の場合とでは、生涯の収入格差としては1億円の違いが生まれます。厚生労働省『賃金事情等総合調査』などを基に筆者が試算したところ、2億円に近いこともあるほどです。正社員である、というのは実はそれくらい有利な条件なのです。

 ところで派遣社員の場合、派遣会社では正社員扱いで、社会保険も適用されている場合が増えてきました。だからといって、その立場のままでいることはあまりおすすめできません。いくつもの会社を渡り歩いているうちに年収がどんどん増えていくようなことは期待しにくく、どこかで正社員に転換してもらえなければ、やっぱり非正規としての稼ぎ方になってしまうからです。

 今、非正規で働いている人は、正社員になる道を目指してほしいです。新卒の時の就職活動が厳しかったため自信をなくしている人も多いのですが、今は景気の回復に伴い求人倍率が回復しています。またこれからの日本では労働力人口は減る一方ですから、正社員として働くチャンスは増えていくことになります。

 今働いている会社での正社員登用に応募する、または、正社員採用の求人がある会社へ転職活動する。いずれかの手段で正社員を目指しましょう。これから就職活動をする場合も、「とりあえずパートから」とは考えずに、正社員を目指すことをおすすめします。

寿退職もおめでた退職も安易に選ばない

 今、正社員である場合、その立場はできる限り手放さないほうがいいでしょう。転職をする際にも、正社員の立場が続けられることを確認の上、転職の条件を探りたいです。

 女性の場合、結婚を期に退職(寿退職)する誘惑や、妊娠・子どもの誕生を期に退職(おめでた退職)する誘惑に駆られることもあるでしょうが、これもできる限り避けたいです。

 理由は大きく3つあります。

 第1に、産前産後休業(産休)および育児休業(育休)期間中の給付金については、離職者は基本的に対象とならないためです。健康保険の被保険者本人なら、産休中に出産手当金などの給付金が支払われますが、夫の健康保険からはもらえません。育休中の給付金は雇用保険から支払われますが、これも休業する本人が加入する社会保険からもらうものです。これらの給付金は休む前の給与の約3分の2(育休半年経過後は50%)にもなる大きな金額です。これを取り逃すのはもったいないです。

 第2に、育休からの復職を会社は拒むことはできませんが、一度退職をしてしまうと正社員としての復職のチャンスをつかむのはとても苦労するからです。時間を空ければ空けるほど、自分のビジネススキルは鈍っていきますし、働く自信もちょっとずつ薄れてしまうので、ますます再就職のチャンスは遠ざかってしまいます。大変でしょうが一度も辞めないことが一番いいのです。

 そして第3に、子どもを保育園に入園させるチャンスも、育休中である人と退職した人とでは大きな差がつくためです。育休中の人でもなかなか入園できなかったりしますが、それでも育休中の社員と求職中の人とでは、入園するチャンスが大きな差(書類上はたった数点の差ですが)となって立ちはだかってきます。一度仕事を辞めて、入園してから再就職をと思っていると、入園すらできず立ち往生する可能性もあります。

保育園に入園できずに立ち往生しないためにも… (C)PIXTA
保育園に入園できずに立ち往生しないためにも… (C)PIXTA

 男性においてもこれは同様です。男性も育休を取得して給付金がもらえますが、雇用保険に加入している会社員だけが対象です。フリーランスになってしまうともらうことができないのです(2歳と4歳の子どもの育児に励む私自身もフリーランスなので、育休とは無縁です)。会社員の男性には、ぜひ育休の取得をおすすめします。

文/山崎俊輔 写真/PIXTA

この人に聞きました
山崎俊輔
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
AFP、消費生活アドバイザー。
1972年生まれ、中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる。日経電子版でコラム「人生を変えるマネーハック」を連載中。2歳の娘と4歳の息子の2児を共働きで育てるイクメンでもある。著書に「読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方」(日経BP社)、「誰でもできる確定拠出年金投資術」(ポプラ新書)など。


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