怒るときは「べき」をリクエストとして伝えよう

 怒りのピーク6秒をやり過ごしたら、今度は「伝え方」も工夫してみましょう。

 「怒るときには、何をどうしてほしいのかを具体的に伝えることが大切です。『ちゃんと』や『しっかり』という曖昧な表現を使ってしまいがちですが、『お客様にちゃんと挨拶してよ』と後輩に言ったとしても、『ちゃんと』の基準は人によって違います。そのため、伝えるときには自分の怒りの原因である『ゆずれない価値観=べき』を、リクエストとして伝えるのがオススメです」
*「ゆずれない価値観=べき」については、前編で詳しく解説しています⇒ なぜ私たちは怒ってしまうのか「怒り」の専門家に聞く

 例えば、自分が「職場の来客には挨拶をするべき」という価値観を持っていた場合。来客に一切挨拶をしない後輩に対しては、「お客様が来たら、自分から挨拶をしてほしい。来客に気付けなかったとしても、せめて目が合ったら挨拶してね」と伝えるなど。「自分はどのような『ゆずれない価値観=べき』を持っていて、何をどうしてほしいのかを具体的に伝えると、お互いの認識のズレを防げます」と、戸田さん。

 「また『普通』や『常識』というワードも、使わないようにしましょう。自分の価値観を押し付けてしまうと、相手を追い詰めたり、反発を招きやすくなったりします。本当に分かってほしいことを理解してもらえなくなるので、こうした言葉や表現には注意しましょう」

 最初のうちは、「伝え方」にまで気を配るのは、難しいと感じるかもしれません。でも、「コツコツ続けることで、徐々に怒りと上手に付き合えるようになります」と、戸田さんは言います。

 「どんなことでも、新しいことを始めるときには、最初からうまくいくわけではありませんよね。ですからアンガーマネジメントも、まずは怒りのピーク6秒をやり過ごすことから始め、慣れてきたら伝え方を工夫してみるなど、徐々にステップアップしていきましょう。すると、いつしか自然と『怒りで後悔しない』ようになれますよ」

怒りにくい人になる「体質改善法」も

 怒りのピーク6秒をやり過ごせるようになり、伝え方にも気を配れるようになったら、今度は「怒りにくい人」になる体質改善にも取り組んでみましょう。冒頭でお伝えした怒りのピーク6秒をやり過ごす対処法は、「いわば即効性のあるアレルギー薬のようなもので、イライラしときにその場で怒りの症状を鎮める方法」だと、戸田さんは言います。

 「アンガーマネジメントを身に付ける方法には、『対処法』と『体質改善』の二つがあります。怒りのピーク6秒をやり過ごす方法は、怒りにすぐ効く『対処法』。一方、そもそも怒りにくい体質になるためには、中長期的に取り組む『体質改善』のトレーニングも必要です」

 そこで戸田さんに、「体質改善」につながる「アンガーログ」という取り組みも教えてもらいました。「対処法」と「体質改善」の両方を取り入れながら、怒りと上手に付き合える人になりましょう。

怒りを記録する「アンガーログ」

 「どんなことに怒りを感じたのか、怒りを記録する方法です。日記をつける要領で、『日時』『場所』『出来事』『思ったこと』『怒りの強さ』(10段階評価)を記録します。

 ポイントは3つ。

 1つ目は、『その場で直感的に書くこと』*その場が無理でも、あまり時間を置かずに書くこと

 2つ目は、『怒りを感じたら、その都度書くこと』

 3つ目は、『書いている時には分析しないこと』

 日記のように毎日の怒りを記録していくことで、自分がどんなことに怒るのか、傾向や特徴が分かるようになります。

 ただし、怒ったことを後悔してしまうこともあるので、気分が沈みがちなときには記録せず、冷静でいられるときに実践しましょう。専用のノートを作るのもいいですし、スマートフォンのメモ機能やスケジュール帳を活用するのもオススメです」