自分の弱さがチャームポイントや強みだと思える1冊

誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」(旺季志ずか著 学研プラス)

 「佐賀のがばいばあちゃん」「女帝」「ストロベリーナイト」など数々の有名ドラマの脚本家で、最近では「吉本坂46」でアイドルデビューも果たした旺季志ずかさんが、歴代の脚本の中から心に残る名セリフをピックアップし、書き下ろしたものです。

 「人と違っちゃいけない」「普通にしないといけない」「自分はたいしたことがない人間だから、底の浅さを知られないようにしよう」とよろいで自分をガチガチに固めてきて、弱みなんて誰にも言えない、という人にはぜひ読んでほしいです。弱さだけでは周囲は離れていかない、むしろ弱さがチャームポイントや強みになるし、弱さがあったからこそ今の自分がいるということ、自分がたいしたことがない人間と、自分をジャッジしているから「たいしたことない」扱いが返ってくるのだ、と気付くようになります。

 この本の「はじめに」で、旺季さんが女優としてようやくもらった役者の仕事は「遺体」だったこと。青いビニールシートと、水たまりの中で息を止めて死ぬのが仕事だったことが書かれています。当時の旺季さんなら、決してこの状況を「面白い!」とは思わなかったでしょうし、悔しい! とか悲しい! という気持ちでいたのではないかと思います。自分がチョイ役でいることの許せなさ、ふがいなさ、というのも味わったのではないでしょうか。でも、きっと今なら「うけるー!」と笑い飛ばしていることでしょうし、私も、うわ! この経験、面白いなぁーと、クスッとしました。

 この本の中に「本当に大切なものは絶対になくならない」というフレーズがあります。人生すべてネタ。どう味わって、どう苦しみ、どう克服するか。自分自身を取り戻すまでのエンタメなんだと思ったら、起きることすべてが楽しいものになるなぁと思います。そんな人生のエンタメ化の秘訣を知りたい方にぜひぜひオススメの本です。

 今回紹介した本はどれも、読書会で「気持ちが前向きになる」という反応が多かった本です。日々の元気をチャージしたいときに読んでみてください。

文/池田千恵 写真/スタジオキャスパー