(3) 栄養素が消化吸収しやすい形になる
たんぱく質やでんぷんは分子が巨大なため、胃腸で細かく分解されてから人体に吸収される。発酵食は、微生物によってこれらの栄養素がある程度分解されているので、吸収しやすく、お腹に優しい。

(4) 食材のうまみが増す
発酵を起こす微生物は、そのプロセスで、元の食材にはなかった成分を作り出す。これらが放つ独特の味わいや香りが、発酵食のうまみとなる。

※ たんぱく質はアミノ酸に、でんぷんはブドウ糖に分解される
たんぱく質は20 種類のアミノ酸が、でんぷんはブドウ糖が連なった巨大な分子。発酵によって微生物がこれをバラバラにする。アミノ酸は発酵食にうまみを、ブドウ糖は甘みをもたらす。

『日本食品標準成分表2010』のデータに基づき作成
『日本食品標準成分表2010』のデータに基づき作成

(5) ビタミンなど食材に含まれる栄養素を増やす
発酵を経ると、食材に少なかった成分が増える。例えば、100gに含まれるビタミンB1の量を比較すると、キュウリのぬか漬けは生の約9 倍、大根のぬか漬けは生の約17倍(右図)。納豆のビタミンKやナットウキナーゼのように、元の大豆にはない栄養成分が作り出される例もある。


 次回は、発酵食の基礎知識をご紹介します。

この人たちに聞きました
小泉幸道教授
東京農業大学 副学長/醸造科学科
専門は発酵食品学、醸造学(酢)。発酵食の科学的な成分変化と機能性に関する研究を行う。「発酵食には、食の歴史が刻まれています。微生物がもたらす限りない恩恵に感謝しましょう」。

藤井建夫客員教授
東京家政大学大学院 人間生活学総合研究所
東京海洋大学名誉教授。専門分野は食品微生物学で、特に海産物由来の発酵食に精通する。「伝統的な発酵食の中には、メカニズムがまだ未解明のものも多い。絶やさないように製法を伝えていくことも必要です」。

取材・文/北村昌陽 写真/大槻純一

日経ヘルス2015年3月号掲載記事を転載
この記事は雑誌記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります

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