ダイエットに熱心なあまり、油を極端に減らしすぎると、肌がかさついたり、吹き出物ができやすくなったり体に不調が表れることがあります。体には油が必要。“いい油”をとると、病気の予防にもつながりますよ。

 とりすぎると太ってしまう印象が強く、ダイエットを考えるとついつい減らしたくなる油。だが、私たちには油をとらなくてはいけない理由がある。

 一つが、油に溶け込む性質の栄養成分を体内に吸収する助けになること。「ビタミンA、D、Eなど油に溶け込む脂溶性成分はそれぞれの細胞には単独では行けず、油に溶けないと入らない。脂肪酸はこうした脂溶性ビタミンの吸収をよくする」と品川イーストワンメディカルクリニック理事長の板倉弘重さん。この場合、油の“いい”“悪い”にかかわらず、とにかく油が必要だ。

 さらに、油は体の材料にもなる。「体内には60兆個の細胞がある。その細胞膜の材料となっているのも油」(麻布大学生命・環境科学部食品生命科学科教授の守口徹さん)。人間の体は、乾燥重量の3〜5割が脂質。細胞膜や細胞内の油滴に蓄えられている油の量は「体重が50㎏の人は体型にもよるが2.5㎏〜5㎏程度が油だと考えていい」(東北大学薬学部教授の青木淳賢さん)。

 細胞膜の材料としての油を考える場合は、“油の質”が特に重要だ。「すべての細胞膜は脂肪酸が組み合わさったリン脂質で構成されている。そのリン脂質に“いい油”が多い細胞膜は柔軟性が高まり、細胞間のやり取りがスムーズになる。細胞の新陳代謝がスムーズになり、体を若く保てる」(守口さん)。

 例えば、赤血球が柔らかいと血液の粘度が上がらず血流のよい状態を保てるため、「血管が固くなったり詰まりやすくなったりしないという効果も動物実験で明らかになっている」と奥山さん。さらに“いい油”の一部は脳にも入って働き「年を取ってからの学習・記憶力を高く保つ効果がある」(金城学院大学消費生活科学研究所客員研究員の奥山治美さん)。

 では“いい油”とは何だろうか。油は脂肪酸が集まってできたもの。いい脂肪酸の割合が多い油がすなわち“いい油”だ。いい油のトップは魚に多く含まれる魚油。ほかにはどんな食品にどんな油が含まれているのか、次週紹介する。