敵意をむきだしにする人の対処法

 大声で部下を怒鳴る上司、注意するとあからさまに嫌な顔をして文句を言ってくる困った後輩──。あからさまな態度で敵意をむき出しにする人たちのターゲットは、「弱くておとなしい人」と片田さん。「ターゲットにならないためには、弱さを見せず、きっぱりとした態度を取ることが大切です」。

 ただし、怒鳴る上司など、過剰なケースは、パワハラにつながるため注意が必要。「恐怖で相手を支配するやり口に、『もしかしたら自分が悪いのかも…』と思い込んでしまう場合は、1人で立ち向かわず、まず部署内や社内で相談が可能な、信頼できる人を探しましょう」。時には、部署異動を願い出る、転職をするなど、“逃げる”のも正しい選択だ。

怒鳴る上司

「なぜ俺が言った通りにしなかったんだ!」「こんなこともできないなんて、やる気あるのか!」。自分の思い通りにいかないと、周りに聞こえるような大声を出して部下を怒鳴りつける上司。自分のストレスや仕事のプレッシャーなどのはけ口として、自分よりも弱い部下たちに無理難題を押しつけて憂さ晴らしをしている。

とにかく怒鳴る
とにかく怒鳴る
交渉上手になろう

怒鳴れば相手は従うと考える、精神的に幼稚なタイプ。否定されることを嫌うので、一度意見を受け止めつつ代案を出すなど、交渉上手になろう。ただし、パワハラに最もつながりやすいケース。あまりにも恐怖を感じるなら、信頼できる人に相談を。また、いったん意見に理解を示して相手を認めつつ、条件を提示。「すべてに従うわけではない」という姿勢を示してみよう。「やり直しの指示は理解しましたが、明日15時までお時間をいただきます」という言い方も効果的。


わざとのけものにする上司

優秀な部下をあえて重要なプロジェクトから外す、伝達事項を伝えないように周りに指示してのけ者にする…。「自信がない人間ほど、優秀な人を前にすると、能力を引き出すどころか、チャンスを取り上げて“無価値化”することで、自分の立場を守ろうとします。目的は、将来、自分の存在を脅かす芽を早いうちに摘んでしまうことです」。

わざとのけ者にするなんて・・・大人気ない
わざとのけ者にするなんて・・・大人気ない
一歩引いた目で見てみよう

自分の能力を誇示したり、「なぜ外されているのですか?」と直談判したりすることは、かえって相手のコンプレックスを刺激する。その上司から信頼を得ている人で、話ができそうな別の同僚や先輩に「チームから外されているのがつらいです」と相談してみるといいだろう。理不尽なイジメを快く思わない人も少なくないはず。観察して、味方になってくれそうな人を探し、「メンバーになれないのがつらい」と相談を。ただし、上司の悪口は絶対に言わないこと!


口ごたえばかりの後輩

注意されて機嫌が悪くなるのが受動的な攻撃なら、口ごたえしたり、自分の非を決して認めなかったりするのが能動的な攻撃。「特に甘やかされて育った人に多い。『自分はできる人間だ』と勘違いしたまま大人になったため、上司や先輩から注意されても、自分の意見のほうが優れているとばかりに抵抗するのです」。

だって、だって・・・
だって、だって・・・
厳しい環境に置いてみよう

「口ごたえする人、自分の非を認めない人は、幼児的な万能感を引きずっています。厳しい状態に置き、身のほどを思い知らせるのも有効な手段です」。こっそり予防策を取りながら、あえて“失敗させる”のも手。万能感を持った部下の価値観を崩すには、「本当にやれるのか1人でやってみる? ただし、責任はすべて自分だよ」と、いったん厳しい環境を与えてみる。「あなたの責任で」と、責任の所在もはっきりさせて。

この人に聞きました
片田珠美
片田珠美さん
精神科医
京都大学非常勤講師。精神科医として臨床に携わり、犯罪心理や心の病の構造を分析。また、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析的視点から分析。『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)など著書多数。

取材・文/岸本洋美、西尾英子 イラスト/村林タカノブ

日経WOMAN2015年10月号掲載記事を転載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。