「自分は、どういう仕事をしたいのか」――働く人、誰もが直面する疑問だ。

 生計を立てるために働くことは大前提だが、どのような組織で、どのような働き方をしたいのか、悩む人は少なくないだろう。

 ペンシルバニア大学ウォートンMBAに在学中の嶋原佳奈子さん(32歳)に、この問いを投げかけると、真っ先に帰ってきた答えは「課題を解決できる仕事」だった。

 自信を持ってそう答えることができる、思い切りのよさを羨ましく思うと同時に、どうして、そこまで言い切れるのか、興味深く思った。

 嶋原さんの仕事や働き方に対する考え方は、生い立ちが大きく影響しているという。

 「沖縄の田舎で生まれ育ち、『雇用の創出』という課題に興味を持つようになった。持続的な発展を通じて人の生活を豊かにするには、仕事が必要なのではないか。仕事を創り出せる人間になりたいという思いが強い」と、彼女は説明する。嶋原さんが解決したい課題は、雇用を創出し、仕事を通じて人の人生を豊かにすることなのだ。

原点は「仕事を創り出せる人間になりたい」という思い

 問題意識が明確でも、それを仕事として取り組むことは決して簡単ではない。彼女が大学卒業後、より国際的な環境でチャレンジできる場所として選び、就職したのは、大手総合商社だ。

 「終身雇用というものにこだわりはなかった。商社で働くことにしたのは『仕事を創り出せる人』になるための経験を得られるのではないか、と考えたから。商社という環境の下で自分を試してみようと思った」

 そんな気持ちで働き始めた嶋原さんの転機は、アメリカでの勤務だった。アメリカのパートナー企業に出向して働くようになり、自身の会社を改めて外から見ることで、自分の働く環境や現状を見直すきっかけになったという。

 「大企業という組織のカルチャーやルールが強い環境にとどまっていると、外の世界の変化に個人として向き合うことが少なくなる。大企業の看板を借りずに、自分の力で挑戦してみたい。そして自分の信じる価値の実現を通じて社会にインパクトを与えたい、という思いが強くなり、転職を決意した」

 そう話す嶋原さんが、次のステップとして選んだのが、クロスフィールズというNPOだ。

 クロスフィールズは、日本の企業の人材を新興国のNPO・社会的企業に数カ月間派遣し、本業のスキルや経験を生かして現地の課題解決に貢献する「留職プログラム」を実施している。彼女は、この「留職プログラム」のプロジェクト・マネージャーの道を選んだのだ。商社からNPOへの転職は、あまり一般的ではないが、その決断を後押ししたのは、嶋原さんがこだわる3つのポイントだった。

ミッションやビジョンに対して働けるのがNPO

 1つ目のポイントは、ミッションやビジョンに対して働ける環境にあること。

 これは、NPOならではの特徴だ。「クロスフィールズのビジョンは、『すべての人が働くことを通じて、思い・情熱を実現できる世界』『企業・行政・NPOがパートナーとなり次々と社会の課題を解決している世界』。もちろんそれを達成するために、事業収益も考えなければいけないが、企業ではなくNPOという組織形態を採っていることもあり、これらのビジョン達成が第一に優先される。青臭いかもしれないが、社会課題の解決を最優先にした組織で一生懸命働けたのは、いい経験になった」と、彼女は説明する。

インドのNGOを訪問し、クロスフィールズや派遣元の日本企業を紹介する様子

 民間企業と新興国のNPOが互いにWin-Winになるような関係を構築し、いかにビジョンを達成できるかを模索しながら、プログラム作りに向き合えることが魅力的だった。