2つ目は、組織の規模だ。

 クロスフィールズへの参画当時は、団体が立ち上がってまだ2年目の時期で、メンバーも6人のみ。小さい組織でゼロからつくり上げていく経験をするのは、仕事をいかに創り出し、課題解決できるか、という自身の問題意識を探求する上で、いい機会になると考えた。

 商社では規模が大き過ぎて遠かった経営層の意思決定が、クロスフィールズでは少人数かつフラットな組織故に、ぐっと速く身近に理解できる。組織としてどのようにマネジメントを行い、事業を進めるのか、トップのリーダーシップを直で見て、意思決定に参加する経験を得たという。

 そして、3つ目のポイントは、成長フェーズである。

規模が小さく、意思決定が速いので毎日が真剣勝負の日々

 参画当時のクロスフィールズは、メンバー全員がノートパソコンを持って一つのテーブルを囲む、カジュアルな雰囲気だったという。そこで、どんどん方向性を決め、自分たちで次のステップを定めて、仕事を進めていかなければならない。

 「オフィスに行けば、あらかじめ決められたやるべき仕事がある、という大企業で経験していた状況ではなかったので、毎日がこれまでにない真剣勝負だった」と嶋原さんは振り返る。

参画当初のクロスフィールズオフィスでのミーティング。意思決定が速く、仕事がどんどん前に進んでいく(真ん中が嶋原さん)
参画当初のクロスフィールズオフィスでのミーティング。意思決定が速く、仕事がどんどん前に進んでいく(真ん中が嶋原さん)

 自分の日々の働きぶりが、仕事や事業創出を大きく左右する。日本企業の社員の派遣先となる新興国のパートナー団体を広げる他、日本側の企業のクライアント・マネジメントにも尽力した。

 クロスフィールズでの3年間では、人のつながりをつくり出すことによって、新たな関係や価値観が生まれる現場を肌で感じることができた。そのような変化の触媒になれることに、やりがいを感じたという。「留職プログラム」を通じて、インドネシアに派遣された日本の大手メーカー企業社員が見違えるほどの変化を遂げたことは、今でも印象に残っているそうだ。

 「研究職の社員の方をインドネシアの地域支援の団体に派遣したが、最初はあまりの環境の変化に方向性を見失っているように見えた。でも、3カ月たって会った時には、派遣元企業の人事部も驚くほど、顔つきが変わっていた。現地でやり切ったことが自信につながったのか、言っていることや話し方もポジティブに変わっていた」

 しかし、そんな学びや達成感を味わいつつも、嶋原さんはクロスフィールズを退職した。なぜ……?

 特に日本でよくいわれる「NPOの給与面の問題」が要因なのかと少し思ったが、退職の理由は経済的なものではなかったという。