海外でも絶賛! センセーショナルな演技

 羽生選手にとって、けがの後の初公式試合がこの平昌オリンピックでした。コンディションが不安視される中で、メディアジェニック(メディア映え)な羽生選手に関する記事は、海外でも紙面をにぎわせていました。そして、見事ノーミスに近く滑り切ったショートプログラム。

 「ショートプログラムはセンセーショナルだった」(CNN)

 不安を感じさせないジャンプと、安定したスケーティング。ソチに続いて使った「SEIMEI」は、和笛と和太鼓の音が奏でる東洋のミステリアスな音色とドラマチックな旋律を兼ね備えた音楽。そこに、まるで彫師が作った日本人形のような切れ長の目の羽生選手の表情と演技がマッチして、ゾクッとするほどのエキゾチックさを醸し出していました。こうした羽生選手の復活の演技を海外メディアはこう評しています。

 「復帰戦で完璧な演技」(ロイター)
 「異次元の強さで復活遂げる」(ハフィントンポスト)
 「歴史的なメダル」(BBC)

 そして、その技術やスター性に加えてとにかく報道が多かったのが、観客が大量に投げ込むことでリンクが黄色く染まるとまで評される「くまのプーさん」のこと。CNNでは、「なぜプーさんが羽生のお守りなのか?」と題した記事まで展開していました。羽生選手は「ティッシュケースがプーさんだったことに端を発したのでは?」と、海外メディアに答えていました。

平昌五輪でも羽生選手の演技後には多くのプーさんのぬいぐるみが投げ込まれました 写真/JMPA代表撮影(能登直)
平昌五輪でも羽生選手の演技後には多くのプーさんのぬいぐるみが投げ込まれました 写真/JMPA代表撮影(能登直)

 今回も、たくさんのプーさんのぬいぐるみがリンクに投げ込まれ、海外でも「羽生がプーさんの雨を降らせた」との報道も見られました。羽生選手は、「みんな持って帰りたいけれどできないので、大会開催地区に寄付します」と意思表示したそうです。「みんな持って帰りたい」と添える気遣いが、さすがスターですね。

 さて、次はオリンピックレコードをたたき出した小平奈緒選手です。

ライバルの肩に手を回した小平選手

 女子で海外メディアの注目を集めたのが、スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒選手です。記録は36秒94のオリンピックレコードでした。

 ワールドカップ500メートルのチャンピオンとして臨んだ小平選手は、2017年には15連勝していました。そのライバルとされてきたのが、オリンピック2連覇中だった韓国のイ・サンファ選手。

 オリンピックは「国のメダルの数」や「国家の威信を懸けて」という側面も見られる、国同士が競い合う色も濃い国際的なスポーツ行事。そのため、各国の関係性に目がいくのもオリンピックの特徴です。

 シカゴ・トリビューン紙では、歴史的な背景からの日韓関係の複雑さに触れながら、「『コリア(韓国)』の名が連呼される観衆の中で、小平選手がイ・サンファ選手の肩に手を回した」と、その心意気を称賛していました。

滑走を終えた小平選手の行動も印象的でした 写真/JMPA代表撮影(毛受亮介)
滑走を終えた小平選手の行動も印象的でした 写真/JMPA代表撮影(毛受亮介)

 小平選手は「スポーツは世界を一つにします。それだけです。私は今でもイ選手を尊敬しています」とコメントして、こちらでもまた称賛されています。

【CHECK】オリンピック憲章
 オリンピックでは、オリンピック憲章に基づいて、政治的、宗教的、人種的な宣伝活動、商業目的の装置や広告用看板の設置などは許可されません。ただし、IOC理事会の許可を得た場合のみ、宣伝や広告が許されることになっています。ただ、今回行われた北朝鮮と韓国の会談のように、外交のきっかけとされる場合もあります。
 つまり、オリンピック会場内では、羽生選手は愛用のくまのプーさんのティッシュケースを使うことはできませんでした。ディズニーキャラクター商品の宣伝になってしまうためです。そして、小平選手の振る舞いについては、人種や民族、国境を越えたオリンピックの精神に合致したものでした。

 そして、今回は残念な結果に終わったスキージャンプ界のレジェンド、葛西紀明選手について見ていきましょう。