ジャンプ界の「ダンボ」は、海外でも伝説に

 雑誌ザ・ニューヨーカーがこんなふうに書いていました。

 「日本のスキージャンプのレジェンドは、54歳での金メダルを目指す」 

 今回はもう一つ記録を残せなかった葛西紀明選手は、試合後すぐに次の五輪を見据えた発言をしていました。これを受けてのニューヨーカーの記事でした。現在の葛西選手は45歳。次のオリンピックで49歳。そして、日本が北海道に招致を目指すとの話も出ている8年後のオリンピックで54歳というわけです。

 「世界トップ10に数えられるスキージャンプ王国日本に、長きにわたって君臨する。537回もワールドカップでジャンプをしたのもスゴイ記録だ」

 ところが、さすがレジェンド葛西。誰もが「スゴイ」という数字くらいでは、もちろん満足しません。葛西がこの2016年のインタビューに答えたのは「500というのはいい数字。でも、僕は600のほうが好きだ」でした。

 これに対して記者は「500は彼にとっては道半ばに過ぎない。ぜひ600回を飛んでほしい。これこそ前人未到。誰も破れない記録になるだろう」と書いています。

 かつてはスキー板を耳より後ろ近くまで持ってくるスタイルで飛んだために「ダンボ」の異名を取っていましたが、そのスタイルを修正し、今ではもうダンボスタイルではなくなり、「Kamikaze(神風)」と呼ばれるようになりました。ところが……。

今はダンボスタイルではないので呼び名は必然的に変わりました 写真/JMPA代表撮影(榎本麻美)

 「『神風』のニックネームが定着しながら、最近ではもう『レジェンド』と呼ばれることのほうが増えているようだ」

 目標はクリアに金メダル。愚直なまでに金にこだわりゴールドのコスチュームで飛行する姿は、誰の目にも焼き付き心に残り、素直に応援したくなります。ニューヨーカーには、「大きくなったら、葛西紀明になりたい」というスキージャンパーの子どものコメントも掲載されていました。「葛西みたいになりたい」なんて緩い言葉ではなく、「葛西そのものになりたい」んです。だって、オリンピックで戦い続ける、レジェンド化されたヒーローなんですから。

 世界も注目する日本スポーツ界のレジェンドたちは、皆この次のオリンピックを目指しています。そして、日本でみんなに語り継がれるレジェンド(伝説)から、世界のミソロジー(神話)となるまで、次なる高みを目指せ! 

文/上野陽子 写真/JMPA代表撮影