フランスでは未婚での出産が5割以上
結婚しないままパートナーと過ごすスタイルで、一時話題になった「フレンチ婚」。フランソワ・オランド元大統領がファーストレディーならぬファーストガールフレンドを連れていたことも記憶に新しいかもしれません。フランス人は結婚しないままパートナーとの間に子どもを作ることも多く、今では婚外子の割合も半数を超えるようになりました(※注6)。
日本では結婚しないまま子どもを持つことは周囲に認めてもらいにくく、子どものことも考えると、結婚せずに出産に踏み切るのは勇気と覚悟が必要。でも、フランスでは結婚をしなくても、一緒に生活するパートナーが亡くなったときなど、法律的に結婚に近い権利を認めてもらえる制度があります。だから、多くの人が結婚にこだわらないし、周りの目も気にしません。その制度は、こんな3段階になっています。
ユニオンリーブル(Union Libre):一緒に暮らすカップル(事実婚)
パックス(PACS):結婚に準じた制度。結法的な婚姻関係はないものの、連帯市民協約として、税などを優遇
結婚:法的に婚姻関係にあるカップル
こうした結婚に準じた段階は独身とみなされるため、子どもは婚外子の割合のほうが高め。子どもができた後に、事実婚からパックス、結婚へと移行していくことも多いようです。
結婚しなければ家族ではない……そんな考えが主流の日本とは大きく違い、一緒にいることで家族になり得るという考え方。そこから、フランス人の中には、むしろ結婚に縛られる日本に対して疑問を持つ人もいるようです。
「なぜ日本の女性は結婚にこだわるの?」
私の知人のフランス人男性は、日本人女性と付き合いながら「なぜ日本の女性は結婚にこだわるの?」と言っていました。そんなことを聞いてしまうと、日本人からしたら「彼女と結婚したくないんだな」とか「結婚から逃げているのか」といった考えが浮かんできそう。でも本人にしてみると、「このままの関係が、なぜいけないのか?」と純粋に考えていたようです。
フランスでは、結婚とは古い制度であり、パートナーとの関係において結婚が最終的な目標ではない、といった考え方も一般的なんですね。
スウェーデンにもまた、「サムボ」と呼ばれる制度があります。これもフランスのパックス同様で、同棲カップルに対してその地位を法律で保障。このため、婚外子の割合もやっぱり5割超(※注7)。そこからやがて結婚に移行するカップルも見られます。
ガッチリと制度に縛られることなくパートナーと一緒にいられて、しかも子どもも問題なく育てられる。こうした制度があれば、日本人独身者のトップの未婚要因「経済状況」や「不自由と束縛」といったハードルもクリアできそうです。
ただ、それでも日本人には、「子どもをつくる、家族を持つ」=「結婚」の考えは根強くあります。独身率が高くなった今でも、まだ日本文化が「結婚は古い制度」といった境地には至っていません。
結婚は手続きや家族関係など、あれこれハードルが高いもの。その前の段階として同棲を認めたり、もう少し簡単に関係解消ができる制度がありつつ、パートナーとの関係は婚姻に近いものが築けたら……結婚にまでは踏み切れなくても、パートナーとの生活が築きやすくなりそうです。
日本の結婚に関する法律を調べてみると、日本国憲法24条に婚姻の自由と夫婦の権利の同等をうたったものがあります。でもこれ、なんとGHQと日本政府によって起草されて、修正を繰り返してきた……つまりは戦後の法律。少し前に夫婦別性すら違憲だとされ、2015年に合憲だと覆されたものの、結局その後はうやむやなまま。こうした戦後の法律が、私たちの結婚観を縛り付けている大元の一つかもしれません。
さまざまな理由で独身の人が増える時代の風潮。その中で、私たちの基盤となっている法律の根っこから、しっかり見直していく時期に来ていそうです。
文/上野陽子 写真/PIXTA