ほう・れん・そうが下手だった 「伝え方」を試行錯誤

――営業は2年目で、日々勉強中とのことですが、普段の仕事の中で何か工夫をしていることはありますか?

 「はい。『伝え方』を工夫しています。実はSEから営業になったばかりの頃は、物事を1から10まで説明するクセがあり、話が長くなりがちでした。そのため、上司に報告や相談をするときにも要点が伝わらず、『何に困っているかが分からない』と言われることも……。このままでは仕事に支障をきたすと思ったんです。

 それで、まずは頭の中にあることをノートやPCに書き出し、状況を可視化することで要点を整理するようにしました。すると、自分の中にとどめておくべきことと、伝えるべきことの住み分けができるようになり、話が長くなったり、要点が不明瞭になったりするのを防げるようになったんです。

 また、今から話すことが『報告』なのか『相談』なのかを最初に言って、さらに、『どういうことを相手に返してほしいのか』も伝えるようにしています。例えば、『相談があります。実は今○○という状況で、自分では△△だと思っているのですが、何か他にいいアイデアはありますか?』というように。このように言えば、上司も聞く準備と態勢がつくれ、どんなことを私にフィードバックすればいいのかが分かります。

 社内ミーティングを招集するときにも、以前は『相談があります』ということだけをメールしていたのですが、今は話し合うテーマを事前に連絡しています。そうすることで、メンバーがテーマに対する意見を持った状態でミーティングに参加できるので、より効率的に会議を進められるようになりました。

 最近では、ノートに書いた文字をテキスト化できるデジタルアイテムも使用しています。社内資料や営業記録を残すときにはそれを使うことで時短になる。試行錯誤しながら、業務の効率化も図っています」

モレスキンのスマートライティングセットを愛用。ノートに書いた内容をデジタル化。「ノートを見ながら書き起こす作業を時短できます。高かったけど買ってよかった私の相棒です」
モレスキンのスマートライティングセットを愛用。ノートに書いた内容をデジタル化。「ノートを見ながら書き起こす作業を時短できます。高かったけど買ってよかった私の相棒です」

――伝え方のスキルが上がれば、お客様とのコミュニケーションにも役立ちますね。

 「私は各企業の管理職の方々とお話をする機会が多いので、『経営戦略』や『情報システムの未来』といった話題にもアンテナを張り、新聞のコラムや雑誌などで情報収集をしています。相手が興味を抱いているのはどんなことか、どんな視点でどんなことに価値を置いているかをイメージするのに役立ちます。

 たわいもない話もします。例えば、前回の訪問で担当者の方が野球好きということが分かったら、次回までに野球のことを調べていく。もしくは反対に、詳しく知らないことを正直に話して、面白さを教えてもらうこともあります。課題を解決するということも大事ですが、お客様の人柄を知ることも大切にし続けたいなと思います」

不採用は失敗ではなく学びの機会、トラブル対応力を強化したい

――日々頑張る中でも、うまくいかずに落ち込むこともあるのではないでしょうか。

 「はい。競合に負け、提案が採用されなかったときには落ち込みます。そのときは、お酒を飲んで気分転換ですね(笑)。

 でも、不採用は『失敗』ではなく『学びの機会』です。今回の提案は残念だったけれど、このときの対応に信頼を寄せてくれて、別案件で声を掛けてくれることもあります。だから『いい勉強になった』と気持ちを切り替えて、次の提案に生かすようにしています。

 ただ、営業として一番つらいのは、トラブルが起きたときです。お客様のところにすぐに行って、不具合の内容を詳しくお聞きしますが、私は技術担当者ではないので、その場で直接解決できるわけではありません。そのもどかしさや、『自分がもっと準備をしていれば、起きなかったトラブルかもしれない』という申し訳なさで、身を切られるような思いがします。

 でも、そこでぼうぜんとしていても、何の役にも立てません。だから自分にできることを少しずつ増やし、トラブルへの対応力を強化していきたいと思っています。お客様も、きっと私がどう対応するかを見ている。トラブルを一緒に乗り越えてこそ、本当の信頼関係が生まれると思うので、メーカーや社内をうまくハンドリングしながら、問題解決能力を高めていきたいですね」