合わなければ転職すればいい?

 「合わなければ転職すればいいや」と言っている新入社員には、今いる会社で自己実現や成長ができる環境をつくってあげることが大切です。

 「合わなければ転職すればいい」という新人たちに、「じゃあ転職すれば」と突き放した姿勢で接した瞬間に、信頼関係はなくなってしまいます。もともとモチベーションが高い人はいないという前提に立ち、仕事を通じてモチベーションを高める機会をつくることで、会社や先輩たち、職種への愛着が生まれるのです。「合わなければ転職」ということは、言い換えれば「合えば転職しない」という話なのですから。

 私のクライアントから、エンジニアとして働くAさんとBさんの例を紹介しましょう。

  Aさんはエンジニアとして入社したのに、任されるのは事務的な調整ごとばかり。「自分は会社からエンジニアとして見られていない」と思い、転職しました。Bさんはフレックスタイムや自由な服装など、自分が思うエンジニアらしい働き方ができ、勉強会への参加を先輩が後押ししてくれる環境です。「この会社は自分をエンジニアとしてリスペクトして育ててくれる」と思い、今もその会社で頑張っています。Bさんが社外の勉強会で「うちの会社、エンジニアとして成長させてくれるよ」と話すことで、会社にいい人材が集まり、Bさんも仕事がもっと楽しくなるという好循環が生まれています。

 この二人の大きな差は、周囲が彼らにどう接して、環境を整えたかです。新人でありながらも、彼らをエンジニアとして認めていたかどうかで違いが出ました。Aさんも入社時はモチベーションが高かったのですが、周囲の環境により下がってしまいました。周囲の上司や先輩たちが、Aさんのモチベーションを上げるスイッチを見極められるほどきちんと向き合っていなかったのです。

「行動」「結果」の2軸で期待を伝える

 今の例はエンジニアですが、新人に認めていることを伝えるためには、目的と相手への期待を示して、さまざまな仕事を与えることが大事です。人は期待されると頑張ろうと思う生き物です。仕事を細切れに渡すのではなく、なぜ任せたいのか、この仕事にどういう意味があり、達成することであなた(新入社員)がどう成長していくのかを示すだけでも「やってみよう!」という気持ちになります。

【仕事を任せるときに伝えること】

・なぜこの仕事を任せたいのか
・この仕事にどんな意味があるか
・この仕事を達成することで、あなた(新入社員)がどう成長するか

 より具体的には、「行動」「結果」の2軸で期待を伝えるという方法があります。

 例えば、新入社員に社内イベントの企画を任せるとしましょう。単に「社内イベントの企画、頑張ってね」と伝えるだけでは丸投げです。そこで、取るべき「行動」と、目指すべき「結果」を交えて、こんなふうに伝えてはどうでしょう。

【伝え方の例】

「○○の社内イベント、企画会社の人と相談しながら進めてみて。この企画を任せるのは、社外の取引先を巻き込んで仕事を進めるという経験をしてほしいからだよ。目標は、参加者100人以上。イベント後のアンケートで満足度80点以上を目指そうか」

 進め方について悩んでいたら、その人の個性に合わせたアドバイスをするのも有効です。例えば、新人が理系出身なら、「プロジェクト管理の計画表を作ってみたら? ○○さんはそういうの得意だよね」と伝えるのです。それだけで、自分を理解してくれている、理解しようとしてくれているという信頼関係が生まれます。