やる気をそがずに間違いを指摘する伝え方
間違っている仕事の仕方を指摘するときには、二つの伝え方があります。
(1)他者にとってどう映るか
(2)相手の成長にどうつながるか
(1)「他者にとってどう映るか」は、後輩の視野を広げてあげる伝え方です。例えば「その仕事のやり方だと、他の部署の人が仕事を進めづらいんじゃないかな?」「私は今、目の前で話を聞いているから分かるけれど、伝える相手は○○支店の支店長だよね。離れたところにいる人に渡す資料としては、少し伝わりにくいんじゃないかな?」という指摘の仕方をするのです。
(2)は、相手の成長にどうつながるかを伝えながら指摘するという方法です。例えば、新人が報告書をまとめてきたけれど、文字だらけで分かりづらく、図を取り入れてほしい場合。あなたなら、どう指摘しますか?
×「図を入れて作り直してきて」
○「図でまとめたら、図解でポイントを分かりやすく示すスキルの向上になるよね。図解はいろいろな種類があるから、自分なりに調べて、ポイントがより伝わるように調整してみて」
例えば上記のように伝えれば、新入社員は与えられた修正作業が自分の説明力向上につながり、新たなスキルが手に入るチャンスだと分かります。
ここで大切なのが、「あなたの育成のため」と明確に言うことです。成長の機会だという認識で取り組むのと、ただダメ出しを食らってやり直しをするのとでは、気持ちが違いますよね。目先のことしか見えないと、やらされ感が出てきます。一歩先の成長イメージを見せてあげることはすごく大事なんです。
言い方を変えれば期待が伝わる
ミスを指摘するときも、ちょっとした工夫で伝わり方が変わります。
×「なんでこんなミスをしたの?」
○「このミスは、いつものあなたらしくないね」
後者は、「あなたに期待している」というメッセージを送れます。ミスをした新人を責めているのではなく、ミスという事象に対して「あなたらしくない」と言っている。ミスは指摘するけれど、相手への期待を添えている言い方です。
例えば、月曜日にモチベーションが低い若手に対して、「今週、まだエンジンかかってないんじゃない?」と言う上司がいます。この言い方には「君はエンジンがかかれば、もっとできる」という前提があり、相手を承認していることが伝わります。こうした声掛けをきっかけに、「実は胃の調子が悪くて……」といった悩みを聞けるかもしれません。
人は期待されると頑張ろうと思う生き物。新人に教えるときは、「期待を伝えながら」指摘することが大切なのです。
聞き手・文/飯田樹 写真/PIXTA