【ステップ1】受容:マイナスの気持ちを共有する

 励ましが必要な場面において、相手は緊張や不安といったマイナスな感情を抱えています。ここで一度、一緒にマイナスの感情を共有するのが「受容」です。あえてネガティブな感情に寄り添うことで、相手は「理解されている」と感じます。

◆プレゼンで緊張する新人には……

「緊張しているよね。私もそうだったよ」
「誰でも新人の時は緊張するんだよ」

【ステップ2】承認:マイナスの気持ちをプラスに転換する

 次に、マイナスに感じている状況をプラスに捉え直しましょう。「悩んでいるのは高い壁を越えようとしている証拠」「問題が起こったのは成長のチャンス」など、「~の証拠」「~のチャンス」と捉え直すのが、比較的実践しやすい方法です。

◆プレゼンで緊張する新人には……

「不安になるのは、あなたが今までやったことがないことにチャレンジしているからだよね」

 プレゼンを「不安なもの」から「自分が成長する第一歩」に捉え直すことができます。

先輩たちがやってしまいがちなこと

 ここまで、ペップトークの「受容」と「承認」を見てきました。ポイントは、マイナスな感情を共有した上で、ポジティブに捉え直して声掛けをすることです。先輩たちは、つい頭に浮かんだことをそのまま口に出してしまうかもしれません。しかし、ポジティブな物の捉え方ができれば、そうした失敗を防ぐことができます。

 ないものではなく、あるものに目を向けることで、気持ちをプラスに転換することができます。水が入ったコップを見て「足りない」と思うのか、「こんなにある」と思うのかは人によって違いますよね。物事は捉え方次第です。

 例えば、子どもに「丸を描いて」と言ったら、「一部がつながっていない」「正円ではなく波を打った状態」の丸を描いてきたとします。あなたはそれを見て、「これは丸じゃないよ!」と怒りますか?

「丸を描いてみて」「描けたよ!」 (C) PIXTA
「丸を描いてみて」「描けたよ!」 (C) PIXTA

 きっと「頑張って描いたね」「すごいね」と言いますよね。実は、そこでいきなり「ここがつながっていないよ」「これだと丸じゃないよ」と言うのが、先輩社員がやりがちなことです。

 仕事ができる人ほど足りないところに目が行くので、新人がレポートを提出したら、「この字が間違っている」「もっと見やすくできる」「ポイントがずれている」と指摘してしまう。不十分な完成度のレポートでも、まずは「ありがとう」と伝えれば、その後に「もっとよくするためにはどうしたらいい?」「こういう方法もあるよ」と改善点を指導しやすくなります。

 「(ここまでやってくれて)ありがとう」という言葉があるからこそ、新人も頑張る気持ちになり、指導ができるのです。これが、あるものに目を向ける、ということです。