【ステップ3】行動:してほしいことを伝える

 行動とは、まさに「してほしいこと」を伝えるものです。これを受け入れるための感情を、(1)受容と(2)承認で整えてきたわけです。「してほしいこと」を伝えるコツは二つあります。「ポジティブな単語を使う」、そして、「相手がコントロールできない『結果』は指示しない」ということです。具体的に見ていきましょう。

コツ1)ポジティブな単語を使う

 「ミスしないでね」「遅刻しないでね」など、私たちは相手に指示をするときに「してほしくないこと+否定形」を無意識に言ってしまいがちです。これを「してほしいこと」に言い方を変えましょう。なぜなら、人の脳はネガティブとポジティブを分けてイメージできないからです。

 「ミスしないでね」と言われると、言われた人は成功するイメージではなく、ミスをしているイメージが頭に浮かび、「ミスしたらどうしよう」と不安になってしまいます。

コツ2)相手がコントロールできない「結果」は指示しない

 もう一つのコツは、「相手ができること」を行動の指示にすることです。例えば、「この契約、取ってきてね」という言葉は一見ポジティブですが、相手ができる行動の指示になっていません。自分がベストを尽くすことはできますが、お客様が契約するかどうかはコントロールできず、言われた側にはプレッシャーになります。「自分のベストを尽くそう」「笑顔であなたの思いをお客さんに伝えてね」と相手ができることに言い換えましょう。

◆プレゼンで緊張する新人には……

「チャレンジを重ねていけば必ず自分の力になるから、自分を信じて」

 自分を信じてプレゼンに臨むという「してほしいこと」を、否定的な言葉を使わずに伝えます。

【ステップ4】激励:背中を押してあげる

 激励は、最後に背中をポンと押すイメージです。受容から承認、行動までのプロセスで、相手はやるべき行動を理解し、やる気も高まり、いい状態になっています。そこで、心に火を付ける言葉をかけるのです。激励には、「大丈夫、あなたならできるよ!」といった気合を与える「激励系」の言葉と、「みんなで応援しているからね」といった安心感を与える「見守り系」の言葉があります。

◆プレゼンで緊張する新人には……

「思い切ってやってみよう!」

 これは激励系の言葉です。こう言われると、本番に向けて引き締まりますよね。

職場でペップトークを使ってみよう

 ここまでの声掛けをまとめると、このようになります。

「緊張しているよね。私もそうだったよ」(受容)
「不安になるのは、あなたが今までやったことがないことにチャレンジしているからだよね」(承認)
「チャレンジを重ねていけば必ず自分の力になるから、自分を信じて」(行動)
「思い切ってやってみよう!」(激励)

 どうでしょう? 信頼している先輩からこう声を掛けられたら、「やってみよう!」と思いませんか。これがペップトークの仕組みです。

 次回は、職場でよくある場面を取り上げて、ペップトークの実践法を紹介します。

文/飯田樹 写真/PIXTA

<この人に聞きました>
浦上大輔
浦上大輔(うらかみ・だいすけ)さん
一般財団法人日本ペップトーク普及協会専務理事。一般社団法人日本朝礼協会理事。北海道大学で運動生理学(健康体育科学修士)、理学療法学を学び、運動指導のスペシャリストとして、学校体育、リハビリ医療、高齢者介護の現場で活躍。現在は人をやる気にさせるペップトークの講演・研修を企業、学校、医療・介護、行政、各種団体で行う。著書に「たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク」(フォレスト出版)がある。