ペップトークの前提は「本気で相手を考えて言う」

 ペップトークでは、何を言われるかも大事ですが、誰に言われるかのほうがもっと大事です。ペップトークを使う人のことを「ペップトーカー」と呼んでいるのですが、「何を言うか」と「誰が言うか」の掛け合わせで、ペップトーカーになれるかどうかが決まります。

 相手と信頼関係のある人が、相手をやる気にさせる言葉がけをできれば、それはペップトーカーです。しかし、信頼関係を築けていないのに言葉だけが巧みだと、とても嫌みっぽく聞こえます。私たちはこれを「イヤミ族・ウワベ族」と呼んでいます。また、信頼関係はあるけれど使う言葉がネガティブな場合は、「カラクチ族・クチワル族」、どちらもなければ「パワハラ族」です。

ペップトークをするには、信頼関係と言葉がけの両方が必要
ペップトークをするには、信頼関係と言葉がけの両方が必要

 尊敬している人に「最近頑張ってるね」と言われたらすごくうれしいけれど、関係の悪い人に同じことを言われたらイヤミに感じますよね。イヤミだと取られないためには、相手の立場に立ち、本気で相手のことを考える必要があります。また、相手から見て、自分がその言葉を言うに値する人間になることも大切です。聞き手は普段の行動をよく見ているからです。

言葉で信頼関係を築くポイント

 ペップトークを有効にする信頼関係を築く方法はいくつもあります。話を聞く、挨拶する、約束を守るなどのコミュニケーション。そして、言動が一致していることも大切です。このように、信頼関係を築くのは言葉だけではありませんが、言葉の使い方にはコツがあります。

【言葉で信頼関係を築く二つのポイント】
1:小さな行動を見逃さない
2:「もったいない」視点で伝える

 一つ目は、相手の小さな行動を見逃さないこと。例えば、声が小さくても新人が挨拶をしたら「挨拶してくれてありがとう」と伝える。自分には不満なレベルだとしても、まずは行動を褒めるというものです。100回のうち1回でも挨拶をしていたら、それを見逃さずに伝えます。できていることを伸ばしていく言い方です。

 二つ目は、「挨拶がない」「笑顔がない」など、何かを「足りない」と言ってしまうとストレート過ぎるので、不足点があることを「もったいない」と伝える方法です。例えば「◯◯さんは話をまとめるのが上手だし、人に伝わる文章が書けるよね。だから、話すときは笑顔になるともっといいと思うよ」という言い方をします。できるからこそ、足りない部分があるのはもったいないのだと分かれば、相手もその部分を改善したくなるでしょう。

「この資料、ポイントがまとまっていて分かりやすいね。数字の部分をグラフにしたらもっと伝わりやすくなるんじゃない?」 (C) PIXTA
「この資料、ポイントがまとまっていて分かりやすいね。数字の部分をグラフにしたらもっと伝わりやすくなるんじゃない?」 (C) PIXTA

 普段から「◯◯さんならできるよ」「こういうところがすてきだよね」「◯◯さんが頑張っているのを見て頑張ろうと思ったんだ」といった言葉をかけているだけでも信頼関係は築けます。言葉が信頼関係をつくり、信頼関係があるから言葉が効いてくるんですね。