シングル女性はライフプランが立てにくい

 Bさんのようなお悩みは、シングルの女性によくみられます。ご相談で皆さんが口をそろえて言うのが、「漠然とした不安」という言葉です。生活に不自由はなく、仕事も順調、プライベートも貯蓄もそこそこ。なのに、なんだかいつも心のどこかに不安が募るといいます。

 実は私もかつてそうでした。同じような悩みを抱えたご相談者にお会いすると、「わかるわかる!」と深く共感したものです。その経験も踏まえて考えると、こうしたお悩みには、シングルならではのライフプランの難しさが影響しているように思います。

 夫婦でライフプランを考える場合、一般的には、キャリア、出産、教育、マイホームなど、考えるべきお金のテーマは比較的絞られています。「今の会社にはいつまで勤めるか? 転勤はありそうか?」などを考えてキャリアプランや収入の予測を立てたり、「いつ、何人子どもが欲しいか?」を考えて教育資金の目標を立てたり、「マイホームを買うかどうか、買うとしたらどこで、どれくらいの予算で?」などを考えたり……。

 一方でシングルの女性の場合、ライフプランにはまだ不確定な要素が多いもの。まず「結婚するのか、しないのか」が決まらないと、(原則としては)出産も子どもの教育も考えられません。女性は男性に比べて、結婚によって生活スタイルやキャリアの方向性を大きく左右される傾向もあります。結婚相手が決まらないと、生活費や収入の見通しも立ちにくいものです。

 仮に、ずっとおひとりさまだったとして将来のライフプランを立てたとしても、「いつまで、どこで仕事をするのか、そして、いつまで生きるのか?」を正確に想定することはできません。前提条件があまり整っていないため、収入・支出の見通し、それに伴う貯蓄の計画も立てづらい。そのためやみくもに貯蓄をしていても、目標に近づいている実感が持てないので、不安が募ってしまうのです。

結婚に対する不安感も影響

 また、結婚願望のある女性なら、「私はいつ結婚できるのかしら?」という不安も少なからず影響すると思います。お付き合いしているパートナーがいても、いなくても、結婚が決まるまでは、常に心のどこかに漠然とした不安感がある、という独身女性は少なくありません。

 この、結婚に対する不安感が、お金の計画を立てられずにもやもやした気持ちや焦りを、より一層引き立てるようにも思います。

 Bさんの貯蓄が800万円を超え、それにもかかわらず不安を感じ始めたのは、29歳くらいの頃からといいます。ちょうど、同級生や会社の同期が三十路を前に結婚ラッシュに沸いた頃と重なります。

 20代の頃は単純に「お金を貯めること」が目的であり、喜びでもあったのかもしれません。しかし30代を目前にしたとき、「そのお金で、自分はどんな人生を描くのか?」を考え始めたのでしょう。自分の人生に正面から向き合い、将来を真剣に考えたとき、不確定な要素が多いことに気づいてしまった。そして、お金があっても、それを使って自分がどう幸せになるのか、イメージがつかない。そんなことも、Bさんを不安にさせたひとつの原因だったのではないでしょうか。