主体的に考えられ、気持ちも前向きに

 テーマをつけて、そのためのお金を確保しようとすると、「自分は将来どうなるのだろう?」と受け身の態勢ではなく、主体的に「自分はどうしたいか? どうなりたいか?」を考えることになります。すると、自然と気持ちは前向きになります。Bさんも、以前はぼんやりと「いつか海外挙式がしたいな」「長期の旅行に行きたいな」と思い描くだけだったのですが、具体的にそれに向かってアクションを起こしたことで、前向きになれたそうです。

 また、やりたいことがいくつかあれば、その優先順位をつけることにもなります。この作業をするうちに、自分が望むライフプランが少しずつはっきりしてきますし、そのためにお金を貯めることで、望む方向へ一歩近づくことができます。

 仮にお金を貯めた後に目標や状況が変わったら、そのときは使い道を変えればOK。貯蓄は住宅ローンなどと違い、お金の使い道を人に決められるものではなく、自分で決めればよいのですから。

 ちなみに私は20代の頃、結婚資金のために毎月1万円のデパート積立をしていました。当時は結婚の予定はまったくありませんでしたが、「積立額が100万円になるまでに結婚する」、「貯めたお金で新居に自分好みの家具を買う」と、勝手に目標を立てていました。その後、貯めたお金は、家具購入以外で使うことになったのですが、当時は将来が見えない不安にふと駆られたとき、自分を励ますよりどころのひとつになっていました。

 このように、ただ漫然と貯めていたお金にテーマをつけてみると、いざというときの準備ができたり、ぼんやりしていたライフプランを、自分で具現化する一歩を踏み出したりすることができます。

 これまで努力して貯めてきたお金は、自分の人生の助けにも、将来への礎にもなってくれます。お金の貯め方を少し工夫して、先が見えない不安を、思い描く将来に自分を近づけていくエネルギーに変えてみてはいかがでしょうか。

文/加藤梨里 監修/日本FP協会 写真/PIXTA