彼氏と別れてでもお金を貯めたい理由

 Cさんのご実家は、ある地方で小売業を営んでいたそうです。Cさんが育ったころには事業はうまくいっており、経済的な不自由もなく、大学生になって上京するときも、両親は快く送り出してくれたとのこと。就職先も、家業のことを気にせずCさんの意思で自由に決めたそうです。

 ところが、東日本大震災後に日本経済が低迷したあたりから、家業の業績が悪化。そして、多額の債務を残して倒産してしまったのです。

 それから、両親は地元のスーパーでパートとして働いたり、建設現場で働いたりして借金返済に奔走しているそうですが、完済までは遠い道のり。年齢的にも無理をさせるわけにはいかないと、Cさんはそれまで貯めてきた自分の貯蓄300万円をすべて両親に渡したといいます。

 それでも、とてもすぐには完済できる見込みがなく、Cさんは自分の収入を上げるために、副業を始めることにしました。本業での仕事は定時で終わることが多いため、19時から24時まで週3回と、土日にコンビニでアルバイトをすることに。これで、月に約10万円の副収入を稼ぎ、実家へ仕送りをすることにしたのです。

 しかし、それだけ稼ぐには、アフター5や休日をプライベートに充てることはできません。Cさんには、それまでお付き合いをしていた彼がいましたが、デートをする時間も取れそうにありません。また、実家のこととはいえ、借金の返済のために経済的に安定しない自分のことで、彼に将来のリスクを負わせたくない、という思いもありました。そこで、Cさんは彼と別れることを決意したそうです。

 そして、この先独身で一生を過ごすことも想定して、借金の返済を優先しながらも、「おひとりさま」に向けての資金の準備も考え始めたいとのことでした。

おひとりさまの老後に必要なお金は?

 明るくほがらかで、まだ27歳のCさんですが、とにかく借金の返済が終わるまでは、自分の幸せよりも家族を助けることに専念したい、そして、実家のことが解決しても、自分の人生でかかるお金は自力で準備したい。Cさんには、そんな強い思いがありました。

 そこで、Cさんが仮にシングルを貫くとした場合、どれくらいお金があればよいかを計算してみました。

 Cさんの現在の生活費は、手取り月収25万円に対して22万円です。仮に、定年まで現在の給与収入が続くとしたら、Cさんひとりの基本的な生活には問題ありません。

 大きなお金として考えたいのが退職後、老後のお金です。もし60歳で退職して、その後の生活費を現役時代の7割、90歳まで生きるとすると、15.4万円(22万円×0.7)×12カ月×30年=5544万円になります。

 これに対して、公的年金で受け取れる金額は、厚生年金加入の女性で月に平均12万円です(年金制度基礎調査平成23年「54性別・世帯類型別・不動産有無別 本人及び配偶者の平均公的年金額」より)。公的年金の受け取り開始は65歳からですから、90歳まで生きるとすると、総額3600万円(12万円×12カ月×25年)になります。

 したがって、60歳で退職するまでに準備したい金額は、(老後の生活費5544万円)-(公的年金3600万円)=1944万円。つまり、老後の生活費として約2000万円が必要です。

 ほかに、ご自身が病気やけがをしたときの備えや、途中で住まいを変えるときの住居費も別途必要になります。Cさんの場合は、事業のために苦労している両親が、いつか病気や介護状態になることも心配していました。これらの出費に備えて、おおよそ300万円〜500万円用意しておくと安心です。

 以上から、退職金や老後のために取っておける貯蓄を差し引いた金額が、老後までに自分で準備しておく生活資金の目安になります。