「ぬか床」のように発酵させたらいい
――そんなふうに打ち明けられる時期をまた迎えられたということですね。
そうそう! 私自身の経験から思うのは、「今はお互いに環境が違うから、あまり理解し合えないし、会っても楽しめないな」と感じたら、無理に取り繕うことはしなくていいということ。大丈夫。本当に大事な友達は根っこのところでつながっているから、心配しなくていいと思うんですよ。
うーん、例えるなら、「ぬか床」みたいに時間を置いたほうがいいってことかな。
――「ぬか床」ですか?!
そう。まさに「ぬか床」。ぬか床って適度に放っておくほうが漬物がおいしくなるといいますよね。そのぬか床のようにプツプツと発酵させておいしくなるのが女の友情。お互いに嫉妬や羨望する時期からさらに時間をかけてそれぞれのステージが変わってくると気持ちに余裕ができて、今度はお互いをリスペクトできる極上の時間が待っています。
――ぬか床、ぜひ熟成させたいです。何がきっかけになるのでしょうか?
やっぱりお互いに「ここまでは頑張りたい」と目標にしていた節目を乗り越えられた時だと思います。子育て中であれば受験が一段落した時期とか、私であれば「この仕事で絶対に力を付けたい」と決めていたチャレンジを乗り越えた時。年齢にすると40代以降でしょうね。
上り坂を必死に上っている時って滑り落ちないように必死でしんどいから、周りのことまで気にする余裕はない。でも、上り坂を上り切ってちょっと踊り場みたいな場所に出られたら、フーッと深呼吸して周りを見渡せるでしょ。すると、自分が上ってきた坂とは違う坂を上り切った友達ともう一度出会えるんです。上った坂は違うし、道の途中でどんな出来事があったかは知らなくても、上り切るまでの努力やつらさは分かり合えるから、お互いに「よくやったよね」とたたえてリスペクトできる。
そうやって再会した女友達とは、今も気の置けない関係で、月1回くらいは会ってにぎやかに飲み食いしています。
――どんな話をするんですか?
アホな話ばっかりしていますよ。関西人だから、基本、自虐ネタです(笑)。「子どもの出来が悪くてしょうがない」とか「仕事でこんなぶっ飛んだことあって参った」みたいな「しくじり話」ばっかりしています。熟成された関係になると、お互いにカッコつけなくていいから最高にラクなんですよ。
――すてきですね。そんな関係に再びなれると信じられたら、「友達と一時的に距離ができてしまっても、気にし過ぎなくていい」と思えそうです。
友人の一言が小西さんの人生を変えた
その通りです。それに、本当に自分が頼りたいと思う友達とは、ここぞという人生の節目で何が何でも会いに行くと思います。私がロンドン赴任を迷っている時に友人に会いに行ったときもそうでした。(友人の一言が小西さんの背中を押してロンドン赴任を決断した話は、「小西美穂『仕事にガツガツ挑戦する人生も悪くない』」)友人とはいえ、他人の人生の決断を左右する一言を口にするのは勇気がいることだったと思います。でも、きっと彼女は、私の顔に「本当は行きたい」とハッキリ書いてあるのを確認して、私を楽にしようとしてくれたんだと思います。忘れもしない。大阪のカフェで、あの時の私の背中を押してくれたことは今でも感謝しています。
――その方はどういう関係のご友人だったのですか?