――マイナスの言葉とは?

 例えば「大変だよね」「しんどいでしょ?」「あまり眠れてないでしょう」といった声掛けです。

 マイナスの状況であることを前提にした聞き方なら、相手も「そうなんです。ちょっと大変ですね。実は、最近こんなことがあって……」と悩みを吐露しやすくなる。

 チームワークは情報共有がとても大事なので、表面的な言葉掛けだけで満足しないよう、相手にとって本音を言いやすい雰囲気づくりを意識しているんです。

――後輩が失敗をしたときには、どんな声掛けをしますか?

 状況にもよりますが、本人が一生懸命取り組んだ上での失敗なら、まずは「ナイスチャレンジ!」と言いたいですよね。まず挑戦する気持ちを応援したいので。

 さらに本人の気持ちに寄り添ってみると、「恥ずかしい」「悔しい」「ここから逃げ出したい」と思っていると想像できるので、「私もよ」の一言を添えます。つまり、「自分も同じような経験をしたことがあるよ。ドンマイ!」というメッセージですね。

挑戦には「ナイスチャレンジ」、失敗には「私もよ!」 これだけで空気は変わります
挑戦には「ナイスチャレンジ」、失敗には「私もよ!」 これだけで空気は変わります

――活躍している先輩から「私もそうだったのよ」と言ってもらえると、とても励まされる気持ちになれると思います。小西さんがその一言を大事にするようになったきっかけはあるのでしょうか?

 私自身がある方にそう言ってもらえて救われた経験があるからです。

 以前、私が関連会社のとても偉い方々が集まる食事会に招待された時のこと。私は緊張からおなかが痛くなってしまって、話が盛り上がっている最中に席を立ってしまったのです。駆け込んだトイレの中で、「早く戻らなきゃ……」と焦るほどに顔面まで真っ赤になってしまって、ますます汗が吹き出してきます。その日は、めったに会えない方々が私を激励してくださる会だったのに、当の私が不在にしてしまったことに、内心パニック状態です。ようやく落ち着き、席に戻るまでの間、「一体どんな顔をして戻ったら……」と生きた心地がしませんでした。

 ところが、席に着いた瞬間、女性の重役がおっしゃったんです。「私もあったのよ~」って。「おなかがすいているときに急に食べるとおなかが痛くなっちゃうのよね! 私もあったの」とカラリとした笑顔で。

心配や同情より救ってくれる言葉の意味

――「どうしたの?」「体調悪いの?」と心配や同情の声を掛けられるより、気持ちが軽くなりますね。

 そうですよね。「場の雰囲気を悪くしてしまうんじゃないか」という私の不安を一掃してくれる鮮やかな一言でした。さらに、その方はこんなふうに続けてくださったのです。「そういえば、(アメリカ元大統領の)パパ・ブッシュも、晩さん会の席で倒れたことがありましたよね」と。絶妙に話題を転じるこの言葉で、その場にいた皆さんの関心は自然とアメリカ大統領に移り、何事もなかったかのように食事会は進んでいったのです。

 私はその女性の重役に深く感謝しましたし、私もそんなエレガントなフォローができる女性になりたいと思いました。以来、他人の失敗に気付いたとき、特に本人がその失敗を気に病むだろうと予想がつくときには、すぐに「私もよ」あるいは「全く問題ない」という一言を返すようにしています。

――小西さんの目の前で日経ウーマンオンライン編集部が大きな失敗をしたときに即座に笑顔で救った「神対応」を紹介した記事も大きな反響がありましたね(過去記事・これが3秒で心をつかむ「ほんわかコミュニケーション」)。でも、失敗というのは必ずしもフォローすればいいというものばかりではなく、中には「本人の努力がもっと必要」と感じる場合もあると思います。そのときにはどんな言葉掛けを?

 改善の努力をしてもらいたいときには、「もったいないなぁ~!」と言います(笑)。