エレベーターに乗っている2分間でここまで聞く!

――相手の状況をヒアリングするときには「マイナスの言葉」から、という実践ですね(過去記事・後輩や部下にとって「話しやすい人」が使う3つの言葉

 まさにそうです。すると彼女は案の定、「毎日綱渡り状態です」と返してきました。

 「どう綱渡りなの?」「シッターさんを日替わりで手配しているから、予約が完了するまで毎日気が気でなくて」「予約ってどうやってやってんの?」「スマホのアプリで探すんですよ。ほら、こんなふうに登録しているシッターさんがリストアップされるんですけど、人気の人はすぐに埋まってしまうので」「お願いするのにいくらくらいかかるの?」「値段は人によって違うんですけど、1時間1700円とか2300円とか。安い人でも自宅から遠い所から来る方は交通費もかさむので」「それは結構出費がかさむね」「そうなんですよ~」……といった感じで。

――すごく具体的に聞くんですね。シッターさんにかかる料金まで!

 経済的な負担については、当人にとっては結構大きいと思いますよ。私は読売テレビから日本テレビに転籍する時に3年ほど契約社員だったので、経済面の不安が仕事のモチベーションと無関係ではないこともなんとなく分かるんです。

 ちなみに、これだけの会話で結構な情報が取れていますが、エレベーターを降りてフロア到着まで歩きながら、時間にして1、2分くらいのもの。このやり取りだけで彼女が直面している日々の苦労がだいぶ見えてきました。

――面談という改まった席ではなく、普段の何気ない会話の中でヒアリングするのが小西流なんですね。

 そうですね。相手のことを知れるチャンスは日常にたくさん転がっていますよ。

「あちこちに相手のことを知るチャンスは転がっているもんです」
「あちこちに相手のことを知るチャンスは転がっているもんです」

 「ナゼナニっ?」チームのデスクの女性も小学生と保育園児を育てているのですが、ある日、いつもより遅めに出社してきた日があり、「お子さん、何かあったん?」と聞いたら、「午前中に面談をこなしてきました」と。「へぇ~、面談って何を言われるの?」「うーん、いろいろアドバイスももらえるんですけど、『もう少しお子さんに愛情をかけてあげてください』って若い保育士さんに言われて凹んだこともあるんですよね」「えー!」みたいな会話を通じて、また、「そういうときに仕事を頑張るのもつらかっただろうなぁ」と彼女の事情を想像するわけです。

 するとさらに知りたくなって「オンエア前に急病の呼び出しがあったときはどうやって乗り切ってるの?」と「取材」が進んでいく。

 彼女たちは、自分たちからは弱音を吐こうとしないし、職場ではバリッと集中して働いてサッと帰るから、こちらから知ろうとしないと苦労の中身が見えてこない。だから、こちらからできるだけ聞こうと意識しているんです。頑張ろうと思っても頑張れない環境にある人もいるんだと、母を看病した経験から分かりますしね。

 うれしいのは、彼女たちが企画した「ママ飲み会」に私も誘ってくれたんですよ。後になって「小西さんをみんなで囲みたくて企画したんですよ!」と言われて驚きましたが、そうやっていろんなライフスタイルの仲間が交じってフランクに情報交換できる雰囲気をつくっていくことが私の役割だと思っていますし、「ワーキングマザーが活躍できるチーム」として社内の模範をつくれたらいいなって。子育てに限らず、これからは介護を抱える社員やスタッフもますます増えるはずですし、男女共に重要なテーマですよね。