小西 そうそう。新しいことにチャレンジするぞ! と意気込んで転職してきた清水さんにとっては、正直、納得できない気持ちもあると思う。「なんで聞く耳を持ってくれないんだろう」って。理不尽な気持ちになることもありますよね。でも、自分にとっては理不尽でも、相手にとっては理にかなっていることって往々にしてあるものなんですよね。

 本来なら、提案を受け取った上司が「この部分をもっとこうしたら通りやすくなる」とか具体的に教えてくれたらいいと思うんだけど、もしそれが期待できそうになかったら、上司以外の他の人に聞いてもいいんじゃないかな。同じ部署の人は、実はライバルでもあるかもしれないから、例えば他の部署の優秀な先輩とかね。

清水 今の場所でもっと踏み込んだことを、転職を考える前にやってみてもいいということですね。

「提案が通らない」「周りに頼れない」壁をどう乗り越えるか

小西 「提案が通らない」って、清水さんが直面している「壁」なんだよね。その壁を避けてしまうのは簡単かもしれないけれど、なんとか乗り越えようと頑張って、もしも突破することができたとしたら、一気に今の環境が楽しくなるかもしれない。一番いいのは、さっきも言ったように、会社の中でとにかく動き回ってみることだと思う。「私の提案書、なんとか通したいんです! ご意見をお願いします~」ってアドバイスをもらいに行くとか。

 例えばね、他の部署でも「あの人すごいな~。いっつも企画をバンバン通してるな~」という先輩、いたりしない? そういう人に「15分でもいいのでお時間ください」とお願いして、簡潔に聞く内容も準備してから時間をもらう。「ここまで自分で考えてみたんですけど、何が足りないと思いますか?」と相手が具体的に答えやすいように聞いてみる。

清水 なるほど。確かに具体的な回答がもらえると、提案に反映しやすいです。

小西 その時にポイントなのは、決してキラキラの答えを期待しないこと。「何か一つでもヒントをもらえたら超ラッキー」くらいの気持ちで臨む。収穫がなかったとしてもね、行動したことに意味があるんです。動き始めると勢いもついてくる。「よし、じゃあ次は、あの人にあたってみよう」って。

ヒントをもらいに行く。それだけで次にやるべきことが見えるかもしれない
ヒントをもらいに行く。それだけで次にやるべきことが見えるかもしれない

 そういうふうに繰り返していると、そのうち「あの子、ずいぶん熱心に聞き回っているよね」と周りにも伝わってくると思う。「だったら自分は役に立てるかも」という人が現れるかもしれないし。そういう人、出てきたらうれしくない?

清水 はい。私、なんとなく、自分が転職組だからちょっと遠慮していたのかもしれないです。どこまで周りに頼っていいのか、分からなくて。聞きに行くこと自体、ちゅうちょしていたような。

小西 分かりますよ。私も大阪の読売テレビから一人、日本テレビに飛び込んだ経験があるから。転職組の私が、どれだけ力を出せるのかって、プレッシャーや不安も感じますよね。そうしているうちに、もしかしたら、いつの間にか、自分の行動範囲を自分で狭めてしまっていたのかもしれない。それでまた、転職という選択肢が浮かんできたのかも。

 でもね、私が思うのは、転職する前に今の仕事をやり尽くしたほうがいいってこと。「自分ができることはすべてやり尽くした!」と思えた後の転職は、気分もスッキリすると思うんですよ。「まだやり切れていなかったかも」という不完全燃焼感が残ると、次の会社でも同じような悩みが生まれるかもしれないから。

清水 一つのことに思い切りぶつかる経験が大事ということですね。

小西 私自身の、失敗を含めて(笑)の経験で言うとね、壁ってチャンスなんです。その壁さえ突破すれば、新しいステージが開けるという大チャンス。だから、私はできるだけ全力でぶつかってみてほしいなと思う。その壁を突破するための要素はなんだろう? と調べてみて、例えば、その一つが人間関係だとすると、「ラッキー、人間関係をとにかくよくすればいいんだな!」とできることが可視化されて気が楽になるかも。例えば、飲みニュケーションに一度付き合うだけで状況が改善するなら、ちょっと参加してみようかな、とか。皆さんはどうかな?

神山さん(32歳・大学教員/独身) 「女の子だから」と言われるようなことはしたくないですが、小西さんがおっしゃるように、無理なくできることで、企画を通すという目的のために効果的な行動なら、私も挑戦してみたいなと思います。

広岡さん(42歳・印刷・営業/独身) 頼られるとうれしいと感じる人も意外と多いから、「相談したい」といろいろな人に聞きに行くのは、社内の人間関係を育む上でもよさそうですね。

清水 社内に聞きに行ける人が増えていくのは、自分にとっても心強いですね。お話を聞きながら、「まずは、あの人にあんなことを聞いてみようかな」という行動のイメージが湧いてきました。