まさにバイブル 付箋だらけです

「野心のすすめ」
林真理子著
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 私の本棚の中で、貼った付箋が一番多いのはこの本かもしれません。具体的なエピソードが満載で、心にとどめておきたい言葉にあふれていて、一気に読める。まさに働く女性のバイブル! 5年前、「深層NEWS」のメインキャスターという大きな仕事にチャレンジする節目に読みました。

 特に「人生には、ここが頑張り時だという時があります」からの一節は、何度も読み返しました。

 『例えば仕事や勉強を必死でやらないといけない時に、いいかげんにやっている人と、努力している人を、神様はちゃんと見ていて、『よし、合格』となったら、その人間を不思議な力で後押ししてくれる」――つまり、強運というのは、ここぞというときにちゃんと努力を重ねている人にやって来るもの。著者の林真理子さんは、その「ここぞという機会」をつくり出すのが野心なのだ、と説きます。

 全編を通して、林真理子さん自身の成功体験に基づくアドバイスがストレートに表現されています。ウソがなく、遠慮がない。だからこそ、強い説得力があるのです。

 今、人生100年時代です。野心を持って人生を切り開くことが大切なのは、決して若い世代だけではありません。40代、50代、60代であっても、自分は「終わった人」と諦めずに何かを始めたい。チャレンジし続けたい。そんな気持ちにさせてくれる一冊です。

 これから社会に出る人、社会に出たものの停滞気味の人、自分のやりたいことが見つからなくてモヤモヤしている人には、心に響く言葉がたくさん詰まっていると思います。

自ら運命を切り開く勇気を与えてくれる

「だから、あなたも生きぬいて」
大平光代著

 この本のあとがきを私が書いています。著者の大平さんと出会ったのは、私が読売テレビに入社して8年目、司法を担当していた記者時代でした。大平さんを長期取材してドキュメンタリー番組を制作しました。すると放送後、自殺を思いとどまった女性など、全国各地から感想の声が寄せられるほどの大反響。翌年の2000年に書籍化され、たちまち250万部を超えるベストセラーになりました。

 弁護士の大平さんが少年院に行くところを同行取材したり、韓国のいじめの現状を取材したり、私がロンドン特派員をしていた時に大平さんがイギリスでの不登校問題対策の現状を取材に来たりと、長期にわたって彼女と子どもたちの問題を取材するきっかけにもなりました。

 特に心に残っているシーンは、人生のどん底にいた大平さんが、ある日、喫茶店で知人の男性に立ち直るよう大声で説得されるところ。「道を踏み外したのは、あんただけのせいやないと思う。でもいつまでも立ち直ろうとしないのは、あんたのせいやで、甘えるな!」――大人を信用しようとしなかった大平さんのささくれだった心に、知人男性がしっかりと寄り添ったことで、大平さんの心が開いていく。人生のターニングポイントを迎えた瞬間の場面です。

 「終わりに」に出てくる「今こそ出発点」という言葉は、大平さんが人生をやり直すためにずっと大切にしていた言葉です。ぜひ、気になる人は全文を読んでほしいと思います。私の心にも深く刻まれていて、苦しい時にはいつも勇気づけてくれます。

 単なる「波乱万丈記」ではありません。彼女の人生が本を通して教えてくれるのは、自ら運命を切り開いていく人間の可能性です。どんな人生にも転機が訪れます。流されてしまいたくなる苦しい局面もあるでしょう。そんな中で、辛抱強く幸運をつかみ取っていく勇気を持つことの大切さを教えてくれます。