白浜オフィスでは現地雇用。吉野さん一家はログハウス建築

―― 総務省のモデル実証事業としては、今年3月で終了しますが、今後の白浜オフィスはどのような形になっていくのでしょうか。

 白浜オフィスは今後も継続していきます。できるだけ多くの社員が、このような働き方を体験し、その経験を東京でも活かしてもらいたいです。これからは、現地採用も考えていきたいです。そして、白浜でも形成できるキャリアパスを作っていかなくてはいけないと思っています。

―― 吉野さんご家族は、これからどうなっていくと思われますか?

 個人的な夢なんですが、一軒家の「ログハウス」を白浜に建てたいです。家族で展示会を見に行くことがあり、妻も子どもも、こんな家で暮らしたいねと話しています。横浜にいるときは、持ち家を持つなんて微塵も思ったことがなかったんですけどね。

 仕事の関係で、万が一、東京に戻ることがあっても、家族は白浜に残してあげたいな、という気持ちもあります。二人目も欲しいし、小学校時代という、子どもにとって大切な時期をここで過ごさせてやりたいです。

―― 最後に、日経DUALの読者のみなさんにメッセージをお願いします。

 地方に移住する決意というのは、簡単なものではありません。私も「地元の九州のほうが・・・」と思ったこともあります。でも、今は逆に、地元でなくてよかったと思っています。「知らない土地へ移住」したからこそ、働き方、生き方に覚悟ができました。そして、それを会社がサポートしてくれていること、心から感謝しています。

 ログハウスは、夢だといいましたが、実は、絶対実現したいんです。それぐらいの覚悟がないと、社員としても成功しない。お父さんとしても成功しないと思っています。

 今回のインタビューは、「在宅勤務を失敗させない6つのポイント」という本連載のテーマから、少し離れた内容だと思われたかもしれない。しかし、実はそうではない。

 人材確保が大変な時代に入る中、企業は、自社の魅力を高めるために、生産性を高めるために、大きな「働き方の改革」を求められる。「これだけ給料が高いのだから、夜中まで働くのも、家族が離れて暮らすのも仕方ない」と思う若者は、これから減ってくるだろう。

 都心の高層マンションを購入することが夢ではない。吉野さんのように、地方でログハウスを建てて、「ワークライフバランス」を保ちながら、いい仕事、いい生活をする。それこそ、これから求められている「働き方」ではないだろうか。

 子育てや介護のための在宅勤務もしかり、自分のライフスタイルを保つための地方勤務もしかり。企業も、地域も、社員も、「覚悟」を持って取り組まないと、成果は得られない。

 最後に、社内を丁寧に説得し続け、このプロジェクトをスタートさせた、セールスフォース・ドットコムの川原 均社長の言葉を掲載しておきたい。

 「白浜に来ている社員、みんな喜んでいるんですよね。それだけでも白浜オフィスを開所した甲斐があった」

 企業におけるテレワーク成功のポイントは、社員が幸せに働ける環境を用意し、結果として生産性を高めることを目指すことである。

※本インタビューは、東京と白浜をWeb会議(V-CUBE)でつないで実施しました。これも「テレワーク」のひとつです

日経DUAL2016年2月25日連載「田澤由利 在宅勤務を失敗させない6つのポイント」から転載。

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