「エージェントが行う面談は、『企業に紹介できる人かどうか』を見極めるための一次面接のようなものです。モヤモヤモードのままで転職のレールに乗ってしまうと、他人に影響されて自分を見失い、何がしたいのか分からなくなったり、理想の条件で転職したはずなのに、『なんか違う、これじゃない……』と後悔してしまったりするケースも。ハッピーな未来のために転職に踏み出したのに、これでは本末転倒になってしまいます」

 転職活動を始める前に行うべき「一番大事なプロセス」――。それは、自分を悩ませるモヤモヤの正体と向き合い、心と頭を整理しておくこと。そのために有効なのが、「ノートに書き出す」方法だといいます。

 「そもそもなぜ転職をしたいのか、その理由を自分に問いかけてみます。人間関係なのか、仕事内容に不満があるのか。将来に関する不安や恋愛問題も絡んでいるかもしれません。今、頭の中に浮かぶ不安をすべてノートに吐き出していきましょう。ゆっくり時間をかけて行うこと。自分でやるのが難しい場合は、キャリアカウンセラーなど専門家の手を借りて行うといいでしょう」

 漠然とした「不安の塊」を細分化することで、それぞれの対策が見えてきたり、場合によっては不安を解決する方法が「転職ではない」と気付いたりする場合も。

 「例えば、転職したい理由が『苦手な上司から離れたい』なら、異動を願い出たり、信頼できる別の上司に相談するなど、現状でもできることがあります。評価されないことがジレンマなら、『どうすればもっと評価されますか?』と直接聞いてしまうのも一つの手。プライベートがうまくいかないことで悩むなら、転職ではない解決策を探るほうがいいかもしれません。

書き出してみると、悩みやモヤモヤの原因が分かってくる  (C) PIXTA
書き出してみると、悩みやモヤモヤの原因が分かってくる  (C) PIXTA

 頭の中でゴチャゴチャになっている不安を整理することで、立ち向かう方法が見つかり、一歩前に進めるはず。それにより、ぼんやりと感じていた怖さも払拭されていくと思います」

 さらに、「転職が怖い」と身構えてしまうのは、「踏み出したら後戻りできない」という思い込みのせいだと指摘します。

 「転職活動をしたからといって、絶対に転職しなければいけないわけではありません。逆に、自分の置かれた環境が『意外と悪くないな』と気付き、前向きに過ごせるようになる人も多いんです。実際、私の元を訪れる方の半数が、転職を踏みとどまっています。在籍している会社で視点を変えて勤め続けるという大事な選択肢をなくさないためにも、転職活動は、在職中に行うことがポイントです」