キャリアの自由度を高めるために仕事をどう選ぶか

 家庭と仕事を両立して働けそうな福利厚生が整った会社のほうが一見よさそうに見えますが、私は「女性の場合は特に、年齢を重ねれば重ねるほどコントロールできないものが増える。だから、自分のキャリアをコントロールできる20代のうちは、仕事の幅を広げたり、専門性を身に付けたりしておくべきだ」とアドバイスしました。そのほうが、その後のキャリアの自由度が高まるはずだから。

 彼女は最初、安定的なB社に気持ちが傾いていたのですが、アドバイスを聞いてA社に入社。半年後、彼女から「A社に入ってよかったです」と、連絡が来ました。

 もちろん、キャリアの築き方は人それぞれですから、どちらに入ったから正解、というものはありません。

 ただ、市場価値、マーケットバリューという観点から、女性は特に20代は「専門性」を重視したキャリアを積んでおくほうが、その後のキャリアの幅を広げやすくなる、ということはいえます。

 福利厚生も重要ですが、制度が整っていても実際には使いづらいという場合もありますし、業績悪化などによりなくなる場合もあります。それよりは、自分の市場価値を高めておき、「いつでも戻れる自分」「転職できる自分」になっておくほうが、家庭と仕事を両立させながら長く働ける可能性が高いからです。

「いつでも転職できる自分」になりたい。そのほうが、長く働き続けられるから (C)PIXTA
「いつでも転職できる自分」になりたい。そのほうが、長く働き続けられるから (C)PIXTA

 まだ21歳の女子学生が、結婚、出産、子育てなど、人生の先の先まで見通して悩んでいる姿を見るたびに、人生における不確定要素が多く、キャリアのコントロールが難しくなりがちな女性にこそ、キャリアを考えるための「思考法」が必要なのではないかと感じていました。

 読者の中には、「特別なスキルも専門性もなく、転職できそうもないアラサー事務職の私にキャリアアップ転職なんて無理」などと思っている人がいるかもしれません。実際、そうした女性から相談を受けることもしばしばあります。そんな方に私がアドバイスしているのは「キャリアというものは、きちんと設計すれば高めていけるものですよ」ということです。

 私が知っている女性で、外資系コンサルティングファームで秘書をやっている方がいます。その人は外資系メーカーの秘書をやっている時に、「今よりも高い年収をお支払いしますから」とスカウトを受けたのだそうです。彼女がそれほどまで求められる人材になれたのには、「転職の会社選び」にポイントがありました。