こんなふうに、「今自分がやっている仕事のどれが職務経歴書に書けるものなのか」と考えていく作業は今日からでもできることです。それをやっていき、自分の「専門性」があぶり出されてきたら、次はその「専門性」をより高めるためには、どんな「経験」を取りにいけばいいのかを考えてキャリア設計を考えてみてください。

 前回の記事(「転職に踏み出せない人に足りないのは『思考法』だった」)で、外資系コンサルティングファームで秘書をやっている女性の例を紹介しましたが、彼女のように、日本の中堅企業の企業の秘書を経験した後、IT企業の秘書になり、さらに外資系メーカーの秘書の経験を積む、といったように、「専門性」と「経験」が高まったり、幅が広がったりするようなキャリアを設計し、それに沿った転職先を選んでいくのです。このように自分なりのキャリア設計ができていれば、転職エージェントを利用する際にも、転職によってどんな「経験」を取りにいきたいのかをきちんと説明できるので、エージェントの言いなりになってしまうこともありません。

 これは今すぐの転職を考えていないという人にも有効です。自分なりにキャリア設計を行い、まずは社内で、「専門性」が高められるような仕事、さらには、異なる種類の「経験」ができる仕事、を積極的に取りにいくようにするのです。同じ人事の仕事でも、採用担当だけでなく研修担当を希望してみるとか、同じ事務でも海外との取引がある部署を希望するとか、小さなチームのマネジャーをやってみる、といった具合です。キャリアを高めるという意識を持って仕事をすることで、市場価値を高めることができますし、転職への助走期間とすることもできます

 転職を全く考えていないという人も、マーケットを意識しながら自らの「専門性」を高め、「経験」を取りにいくことができていれば、自立的にキャリアを築いていくことができ、自分に自信を持って働き続けることができるかと思います。

文/井上佐保子 写真/小野さやか(北野さん)、PIXTA(イメージ写真)

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北野唯我
北野唯我(きたのゆいが)さん
ワンキャリア最高戦略責任者。神戸大学経営学部卒業。博報堂、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画。サイト編集長としてコラム執筆や対談、企業現場の取材を行う。テレビやラジオのほか、日本経済新聞やプレジデント、東洋経済などのビジネス誌を中心に「職業人生の設計」の専門家として活躍。著書「転職の思考法」(ダイヤモンド社)は10万部越えのヒット。