「やりたいこと」から「できること」へ

 福島さんは、同じゆとり世代の人たちに、転職の際に、自分の「やりたいこと」だけでなく、「できるようになりそうなこと」「できるようになったほうがいいこと」など、「できること」ベースで考えてみてほしい、と話します。

あなた自身の「できること」は? (C) PIXTA
あなた自身の「できること」は? (C) PIXTA

 その理由は、ゆとり世代が受けてきたキャリア教育にあると言います。

 「我々が高校、大学時代に行われていたキャリア教育はまず『やりたいことはなんですか』というところから始まりました。『やりたいこと』がポンと出てくる人はいいのですが、そうじゃない人も当然います。そうした人のなかには、よく分からないまま自己分析などをさせられ、周囲からのプレッシャーを感じ、その場しのぎで口先だけの『やりたいこと』を決めてしまったという人もいました。

 また、キラキラした社会人のロールモデルによる出前授業を受け、やる気がアップする人もいましたが、あまりにまぶしい先輩の姿を前に『やりたいこと』一つ見つからない自分はダメだ、と自己肯定感を下げてしまったという人もいたのではないでしょうか。

 ゆとり世代は、『やりたいこと』を重視するキャリア教育の弊害で、『やりたいこと』にとらわれ過ぎてしまう傾向があるように思います。『やりたいこと』ができる人生は幸せですが、『できること』がある人生もまた幸せなもの。転職を考える際はぜひそんな視点を持って考えてみてください」

文/井上佐保子 写真/PIXTA

プロフィール
福島創太
福島創太(ふくしま そうた)
教育社会学者。1988年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、リクルートに入社。転職サイト「リクナビNEXT」の企画開発などに携わる。退社後、東京大学大学院教育学研究科修士課程比較教育社会学コース修了。現在は、「教育と探求社」で中高生向けのキャリア教育プログラムの開発に携わりながら、同大学院博士課程に在学中。近著に「ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか?」(ちくま新書)(プロフィール写真/苅部太郎)。