強みを数値化して、自分なりの転職活動を開始

 相談に行ったエージェントから「広報職はあきらめた方がいい」と、現実的なアドバイスを受けた沙希さん。

 「転職で業種や職種を変えることはできそうにないうえに、転職に成功しても収入も大して変わらないか、むしろちょっと安くなってしまうのが現実だと知り、『私はやっぱり、おとなしくこの仕事をやっていくしかないのかな…』と落ち込みました」

 一方、エージェントからの厳しいアドバイスに凹みつつも、沙希さんは、営業時代に成績が1位だったことやこれまでの仕事で数値化できる強みを整理し、やりたい仕事にこだわり、あきらめずに動き続けた。

 会社外の知人には自分が転職を考えていることや転職してやってみたいことを知らせるようにし、いろんな人に会って転職の相談をしたり、友人に「会社で求人が出たら教えて」と頼んでおくなど、自分なりの転職活動を続けたのだ。

 すると、ほどなくして友人からいい知らせが舞い込んできた

 「化粧品会社に勤めている友人から、『広報ではないけれど、マーケティング担当者の求人が出たから応募してみてはどうか』と案内が来たのです。もともと、美容には興味がありましたし、自分でも使ってみたいと思えるようなすばらしい商品をつくっている会社だったので、ぜひこの会社で働きたい、とすぐに応募しました」

 設立間もない企業だったが、会社としての制度も整っていることも魅力の一つだった。

転職後の生活は激務だが…幸せ

 応募をしてみたものの、業種も職種も全く異なる未経験の自分が受け入れられるのかと不安だったが、なぜか「出版社の編集、営業経験がある人は珍しい」と評価され、採用となった。

 「入社後に分かったのですが、設立間もない企業ということもあり、転職者が多く、他業種からの転職者や未経験者も受け入れる土壌があったようです」

 会社は急成長している段階にあり、社内は活気にあふれていた。「20代の社員も多く、8割が女性。忙しくてもやりがいがあります。年配の男性社員ばかりで、若手がどんどん辞めていき、赤字続きだった前の会社とは正反対ですね」

 以前の職場と同様、深夜までの残業になることも多いが、不思議と以前のような疲れは感じないという。

 「自分がいいと思う商品をもっと多くのお客様に届けたい! と心の底から思えるし、会社の成長とともに自分も成長して行ける気がするので、頑張ろうと思えるんです」

 ただ、マーケティングに関する知識も実務経験もない沙希さんは、データ収集や分析など、一つひとつの仕事を、本を読んだり、いろんな人に教わったりして学びながらこなしているという。前例の無い中で、一から立ち上げるような仕事も多いが、「この仕事を1年続けたら間違いなく力がつきそうだな、と手ごたえを感じています」