自分だけの「好き」を大事にしたほうがいい

 アメリカで最も注目される起業家・投資家といわれるピーター・ティールは、採用面接で「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か」を問うそうですが、「日本酒について誰よりも詳しく、自分の言葉で語れる」というのは、まさに「他の人には見えていない自分だけの真実」が見えているということなので、そこに「自分だけにしか分からない、自分ならではの価値あるマーケット」が隠れている可能性がある、ということになります。

 もちろん、あなたにとっては価値のあるものでも、世の中には全くニーズがないという可能性もありますが、例に挙げた「日本酒」であれば、求める人も多く、そこにはマーケットがありそうですよね。このように、自分だけの感覚、自分だけの「好き」を大事にする、ということは、自分の仕事、キャリアについて考える上で、とても大切なことです。

自分だけの「好き」の感覚を大事にしてあげる (C)PIXTA
自分だけの「好き」の感覚を大事にしてあげる (C)PIXTA

 次の段階ではそれを言語化し「キャッチコピー」にしていきましょう。やりたい仕事が「ライター」であれば、単なる「ライター」よりも、「美容ライター」「フードライター」と分野を絞ることで、来る仕事の性質が変わります。こうした肩書、キャッチコピーは、実績が伴わないとしても、「自分のなりたい姿」を少し先取りして付けてみましょう。

 もし、地方のさまざまなお酒に関する仕事につなげていきたいのであれば、単なる「日本酒ガイド」よりは、「日本中の蔵元を訪ねた日本酒ガイド」と名乗ってみるのです。そのほうがやりたい仕事につながりやすく、その分野により詳しくなり、キャッチコピー通りの存在に早く近づけるように思います。

文/井上佐保子 写真/PIXTA

この人に聞きました
北野唯我
北野唯我(きたのゆいが)さん
ワンキャリア最高戦略責任者。神戸大学経営学部卒業。博報堂、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画。サイト編集長としてコラム執筆や対談、企業現場の取材を行う。テレビやラジオのほか、日本経済新聞やプレジデント、東洋経済などのビジネス誌を中心に「職業人生の設計」の専門家として活躍。著書「転職の思考法」(ダイヤモンド社)は10万部越えのヒット。