旅先でケチるのはもったいない

――旅でのお金の使い方にルールはありますか?

 節約ももちろん大切ですが、いいお金の使い方をするほうが難しいのではないかと思います。去年、仮想通貨がはやっていた時に、自分は何もしていないのにお金が増えたり減ったりするのを見て、お金って何だろうと考えたんです。「お金は使ってこそ生きる」と実感し、自分が変わることにお金を使おうと思いました。

 旅では、絶対にケチらないことを意識しています。例えば、往復タクシーに乗れば行けるパン屋さんがあったとします。大学生や社会人になりたての金銭感覚では4000円はもったいないと感じますが、もう一度その場所に来るほうがもったいないんですよね。その4000円で行きたい場所に行けたということは、人生で意味があること。非日常の中で節約するよりは、日常の中で切り取れるところを切り取って、旅の時は大きい気持ちで楽しみます。

「生きたはずの人生を体験できる」のが旅

――お話を聞いていると、旅に出たくなってきました。一人でも行きやすく、公共交通機関のある旅先でおすすめはありますか?

 東京からなら、京都とかもいいと思います。これくらいの年齢だと何回目かの京都になると思うので、グルメや雑貨屋さんなど、一つのテーマを決めて、自分の好きなものを探求する旅です。

 私は、京都でブックカフェを巡ることにハマっています。午後のひとときに、街を歩き回るのではなく、チーズケーキを食べながら本を読んでいたら、京都で暮らしている大学生みたいな気持ちで過ごせました。その場所に属しているかのように振る舞い、街と同化する瞬間があると、すごく街と仲良くなれる気がします。

「街と同化する瞬間があると、すごく街と仲良くなれる気がします」
「街と同化する瞬間があると、すごく街と仲良くなれる気がします」

 昔から旅が好きなのですが、その理由は「その場所で生きたかもしれない人生を体験できるから」だと思っています。本を読んでいて楽しいのは自分ではない登場人物の人生を味わえるからで、旅はその体験バージョン。五感をすべて使って「私がもしここに生きていたら」と体験できます。それがすごく好きですね。

聞き手・文/飯田樹 写真/稲垣純也