学生時代に特例を受けた国民年金は「免除」じゃない

 20歳以降、学生時代に国民年金の特例を受けていた人も要注意です。学生の間に国民年金保険料の支払いが猶予される制度のことを「学生納付特例制度」といいますが、「納付特例」は「免除」とは違います。「在学中には保険料を支払わなくてよい」というもので、「払ったことになる」わけではないのです。卒業すれば原則としてその年から年金保険料を納めなければなりませんし、在学中に納めなかった期間分の保険料を払わないままにしていると「未納」状態になります。

 ではなぜ学生の「特例制度」と呼ばれるのでしょうか? それは、保険料を納めていなかった学生の期間を、年金の加入期間に含めることはできるためです。

 通常、老後に受け取る老齢基礎年金を受け取るためには、国民年金の保険料を10年以上納めることが要件です。納めた期間が10年に満たないと、将来の年金は1円も受け取れません。しかし学生納付特例制度を利用した期間については、保険料を納めていなくてもこの「10年」に含められるわけです。

 ただし、将来に受け取る年金の金額は、あくまでも納めた保険料に基づいて決まります。満額を受け取るためには、学生だった期間も含めて20歳から60歳までの40年間分の保険料を納める必要があります。もし、学生だった期間分の年金保険料を納めないままにしておくと、その分、将来に受け取る年金額は少なくなるのです。

 老後に満額の年金を受け取るには、卒業後に学生時代の保険料を遡って納めることになります。これを「追納」といい、10年以内なら過去の保険料を納めることができます。

 追納する場合、3年度以内ならば過去の保険料額をそのまま納めますが、3年度を過ぎてからは加算額が上乗せされます。例えば平成25年度に納めるはずだった保険料は月額1万5040円でしたが、平成29年度中に追納すると1万5120円を納めないと、払ったことになりません。

 なお、お勤めの方なら、社会人になると厚生年金に加入し、年金保険料は原則として給与天引きになります。今の保険料は自分で手続きをせずに納付できているでしょう。だからこそ、学生時代の年金保険料のことはうっかり忘れてしまいがち。これまでの年金の加入・納付状況は、毎年届く「ねんきん定期便」で確認できますから、過去の未納がないかどうか、ぜひチェックしておきましょう。

※日本年金機構
学生納付特例制度


 お給料が入ってくると、つい振り込まれた金額をそのまま日常の生活費に充てようと思いがち。ただ、支払うべきものをあまり先延ばしにするのも、後に不利な結果をもたらす恐れがあります。まずは奨学金や年金保険料を優先してから、家計をやりくりする仕組みを作れるとよいですね。

文/加藤梨里 イラスト/とげとげ。