復帰時には子育ての環境も要チェック

 産休・育休が明けたら、仕事復帰を望む人も多いでしょう。しかし、思い通りにならない現実に直面するケースも少なくありません。厚生労働省の「平成28年度雇用均等基本調査」によると、在職中に出産した女性の81.8%は育休を取得しています※1。一方で、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2017」によると、第1子の出産後も仕事を続けている人の割合は53.1%(2010~2014年)です※2。これは2000年代初めに比べて10ポイント以上増加しているものの、いまだに半分近くの人が出産と同時に仕事を辞めてしまっていることも意味します。

 その大きな理由の一つが待機児童問題です。2017年10月1日現在の待機児童数は全国で約5万5000人※3。各地に保育所を新設するなど対策が講じられていますが、まだまだ行きわたっていない状況です。保育所に子どもを預けられないが故に、泣く泣く仕事を辞めている人も少なくないはずです。これから出産・子育てを望む際には、その先のキャリアに関わる現状も意識しておきたいものですね。


 子育てをしながら仕事を続けるには、お給料の金額や仕事のやりがいだけでなく、両立できる環境も重視しておくのがおすすめです。例えば、住む場所。保育所の入所状況は地域によって差があります。待機児童が少ない地域なら、子どもの預け先が見つかり、復帰が近づくかもしれません。もちろん、子どもの送り迎えをしながら通勤することを考えて、勤務先と保育所、自宅と保育所のアクセスの利便性も大切です。

 地域によっては、子育て世帯をサポートする制度を設けているところもあります。東京都練馬区、杉並区、文京区などでは、子どもの一時保育やベビーシッターなどを利用できる支援券を配布しています。支援券を利用すると、通常よりも少ない負担で子どもを預けることができます。もらえる支援券の枚数には上限があるので、フルタイムでの復帰で長期間利用するのは難しいですが、預け先が見つかるまでの間など、少しずつ仕事に復帰する体制をつくっていく上で活用できそうです。



 働き方のスタイルも大事なポイントです。従来は、就業時間中は会社に行って働くのが一般的でしたが、近年はテレワーク・在宅勤務を導入する企業もあります。内閣府のまとめによると、2016年現在は13.3%とまだ多くはありませんが、年々増加傾向にはあります※4。在宅で働ければ、保育所に子どもを入れられなくても、キャリアを諦めずに済みます。



 会社に通勤する必要がなければ、住む場所の選択肢も広がります。大都市圏など中心部へのアクセスがよい、駅に近い地域ほど、住宅価格や賃料、物価が高い傾向があります。交通の便はそれほどよくなくても、自然の豊かさや安全性など、子育てをしやすい環境を選ぶのも一つかもしれません。全国の自治体には、子育て世帯に紙おむつの購入券を配布したり、チャイルドシートの購入費を補助したり、育児用品の貸し出しをしたりするところもあります。

 こうした状況をチェックしつつ、長期的なキャリアをどうしていきたいか、どんな環境で子育てをしていきたいかを考えておくことも大切ですね。

 出産や育児に関わるお金のこと、分かりましたか? 近いうちに子どもを希望している人も、もう少し先かなという人も、将来のビジョンを描く上で知っておくと、きっとライフプランを立てやすくなりますよ。

文/加藤梨里 イラスト/とげとげ。