転身の理由「この職場ではキャリアアップができない」

Q.退職・転職・独立を検討したきっかけを教えてください。

1.これまでの職場ではキャリアアップできないと思った 39%
2.仕事にやりがいはあったが、家族との時間のバランスが確保できなくなった 38%
3.新しい環境で仕事をしたいと思った 36%
4.これまでの職場ではある程度、仕事を「やり切った」感覚があった 31%
5.職場に目標となるようなロールモデルがいなかった 28%
6.これまでの職場ではスキルアップできないと思った 26%
7.報酬が低い・少なかった 22%
8.新しくやりたいことができた 21%
9.職場の文化的に、育児介護との両立は難しいと感じた 21%
10.時短などで仕事継続は可能だったが、仕事にやりがいを感じられなくなった 19%
11.育児介護の仕事を両立させるのに十分な制度が整備されていなかった 15%
12.業界の先行きが不透明 12%
13.とにかく自分の時間が確保できなかった 12%
14.仕事に起因することで体調を害してしまった 12%
15.仕事の人間関係がうまくいってなかった 9%

 育児と仕事の両立が難しいという声もありますが、それと同じぐらい
「新しい環境で仕事をしたいと思った」
「これまでの職場ではある程度、仕事を『やり切った』感覚があった」
「これまでの職場ではキャリアアップできないと思った」
と仕事自体への不満が見られます。

(C)PIXTA
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 アンケートの回答には

 「何か新しい仕事が舞い込んできたときにメンバーに選ばれない。常にサポート業務しかやらせてもらえない」

 「自分ではかなり高いパフォーマンスを出したと思っていたが、上司からは『パフォーマンスよりも残業できるかどうかが重要』という発言があった。また査定も説明なくマイナスがつくなど理不尽だったので退職した」

 という声もあがりました。出産・育児そのものが退職の直接的な引き金になるのではなく、むしろ仕事への不満が退職を後押ししているようです。

 とはいえ仕事・職場への不満は相談しづらいもの。そんなときに頼った人やサービスはあるのでしょうか?

Q.仕事の継続に困難を感じたときに相談した方や利用したサービスは?

1.社外の相談機関(人材紹介会社のコンサルタント) 31%
2.サービスは利用していない 27%
3.社外の相談機関(キャリアカウンセラー) 17%
4.社外のセミナー、勉強会 10%
5.社外の相談機関(公的機関) 7%

 社外のコンサルタントやキャリアカウンセラー、セミナーや勉強会などに頼った人もいる一方で、「サービスは利用していない」人も多く見られました。女性がキャリア継続に悩んだとき、他人には相談しづらく、自分で解決するケースも多いといえそうです。

(C)PIXTA
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 今回のアンケート結果を見て、『育休世代のジレンマ』の著者であり、女性活用ジャーナリストである中野円佳さんはこう指摘する。

 「女性活躍推進法の施行により、女性管理職の登用は増えると思いますが、“単なる数合わせ”での抜擢となるとスキル不足があったり、周囲から不公平感が出たりするなどして、数年後に反動がでる企業も出てくると思います。今のままでは、妊娠・出産をまだ迎えていない育休プレ世代も社内にロールモデルがなかなか見つからず、これからの働き方に希望が持てないのではないでしょうか。社内で残業ありき・長時間労働ありきの働き方や評価制度を変えるなど、環境整備が必要だと思います」。

 またWaris代表取締役の田中美和さんは「キャリア継続に悩んだとき、フリーランスという働き方もある」といいます。

 「組織の中で得た知識や経験を生かしつつ、フレキシブルに働きたいと思ったときにフリーランスという選択肢もあります。ある程度キャリアを積んだプロ意識・キャリア意識の強い人にはふさわしい働き方ともいえます。実際、会社員時代にキャリアを積み、ライフイベントをきっかけにフリーランスに転向して活躍している人もいます。ただ、フリーランスは社会保障が薄いため、こうした新たな働き方に対応した法整備の在り方が今後の課題となるでしょう」。

 Warisでは(1)管理職の在り方にダイバーシティ(多様性)を、(2)女性のフリーランスという働き方への支援体制を、(3)出産を機に仕事を辞めてしまった“ブランク人材”が労働市場へ戻れる枠組みづくりを、という3つの提言を行い、サポートを続けていくとしています。

 会社や組織が変わらなければ自らが働き方を変える――それもひとつの方法と考えつつ、自分の強みとなるキャリア・スキルを磨くことが必要だといえそうです。

文/三浦香代子 写真/PIXTA