女性のキャリア伸長には職場の風土変革も欠かせない

 続いて、各社の担当者が考えるそれぞれの取り組みの特色がテーマに。技術系の採用が多い日立製作所の迫田さんは「そもそも機械・工学系を選考する学生のうち、女子学生の比率は約7%と少数派です」と言います。そうしたなかでも優秀な人材を獲得するため、採用にも力を入れていて、“リケジョ”の採用比率は現在約18%と伸びており、着実に母集団を形成しているそうです。

 女性自身のキャリア伸長を考えたときには、男性管理職の意識を変えるなど、職場の風土改革も必要。女性のキャリア形成支援と風土改革の二つを合わせてやらなくてはならないと、日立グループでは「女性の部下を持つ管理職向けマネジメントセミナー」を全社で実施したり、場所や時間を問わない勤務形態「タイム&ロケーションフリーワーク」を推進したりするなど、さまざまな施策を行っています。

 女性執行役員が誕生したみずほフィナンシャルグループでは、これまで、女性管理職比率17%を達成するという数値目標がありました。銀行・総合職部門の係長相当以上では女性比率18%を達成するなかで、特にここ3年間で力を入れてきたのが、特定職での数値の底上げ。約1万2000人という社員数のなかで占める割合が多い職種の人に対し、「特定職エキスパートプログラム」というリーダー育成の研修制度を設けています。

 「スキルや意欲はあっても、実際にチャレンジするところまで持っていくのは難しい。管理職の意識を徹底していくなかで、遠慮しがちな女性の背中を押してあげることが必要」と犬塚さんは言います。「今後の課題は、Raiseの部分。ライフイベントによって成長が止まりがちな女性に対し、男性管理職が、女性社員の意識にストレッチを与えるためにどのように対話すればよいのかといった個別のケアも行っています」(犬塚さん)

女性の退職理由をなくす休職制度の導入

 日本航空では当初、女性社員がライフイベントを経験しても辞めないで働き続けられる制度改革・人材育成を行ってきましたが、その後は、仕事においてキャリアップを目指し、個人としても成長できるように支援することへと視点を移してきているそうです。

 各部署の部門長が自分の部署の労働時間を改善するアイデアを出し合う定期報告会の開催や、フレックスタイムや週1日の在宅勤務制度の採用、育休からの復職研修を実施。また、海外勤務や出張が多い部署はこれまで比較的女性が少なかったのですが、女性のキャリアアップも考え、そういった部署にも女性社員の配置を増やしています。

 今年度から新たに導入したのは、配偶者転勤同行休職制度。未就学の子供を持つ社員を対象に、配偶者の転勤による最大2年間の休職が可能に。また、医師の診断書を提出すれば体力的にも負担のある不妊治療を1年間休職して受けられる「不妊治療休職制度」もスタートしています。「この二つの制度は女性の退職理由を聞き取るなかで気付きました。また、女性社員が子供を連れて単身で海外赴任するケースを後押しできるよう、海外赴任手当も見直しました」(蘆野さん)

 最後にモデレーターの安原編集長が、この4月から女性活躍推進法が本格スタートし、従業員301人以上の企業は具体的な数値目標を入れた行動計画表が義務付けられたと紹介。

 その制度に基づく行動計画の達成について、みずほフィナンシャルグループの犬塚さんは、「女性の声を意思決定に入れていき、強さを求めていく。男性の育児休業取得率(配偶者出産休暇含む)は現状1%未満なのですが、これも上げていきたい」と表明。

 日本航空の蘆野さんは、同社グループでは従業員300人以下のグループ企業を含め、43社すべてが行動計画の策定を行っており、JALなでしこラボの取り組みを全社全グループが共有し、広めていきたいと言います。

 日立製作所の迫田さんは「役員数の目標は達成できました。今後も達成・未達成かかわらず数字を公開し、実現までのPDCAを行っていきます」と語りました。

文/北本祐子