「山下先輩は怖い」

 私たちの仕事は安全が第一です。単に作業の知識や技術だけではなく、根本に安全意識を身につけてもらわなくてはいけないので、指導の際はどうしても厳しいことを言わなくてはいけません。人によって理解の仕方も違うし、同じ言葉を言っても通じないこともある。どう伝えればいいか最初は悩みました。

 たとえば、ボーディングブリッジはあらかじめ決められた高さに装着しなくてはいけないのですが、後輩がそれを守れていなかったことがありました。担当した後輩に「どうしてこの高さにしたの?」と聞くと、答えられないことがあります。考えた結果の行動が間違っていても、それは選択を間違っただけで、途中までは合っていることがある。一番怖いのは、考えずに「何となく」してしまうこと。何気ない行動が致命的な事態にもつながりかねないからです。

確認事項は基本的に同じ。だからこそ、ルーチンとして流してしまわないよう、一つ一つの作業に細心の注意を払っている
確認事項は基本的に同じ。だからこそ、ルーチンとして流してしまわないよう、一つ一つの作業に細心の注意を払っている

 私は「なぜそう決められているのか」を本人に考えさせた上で、そこには必ず意味があるんだと説明するようにしています。ただダメだというのではなく、一緒に考えた上で「なぜダメだったのか」理由を添えると相手が理解しやすくなると、インストラクターをやっていくうちに学びました。

 インストラクターをやって10年近くなりますが、私、教えていない子にも「山下先輩は怖い」と思われているみたいなんです。けっこう傷つきますが、それだけ厳しい気持ちで臨まないといけない仕事を私たちはしている。今理解できていなくても、いずれ分かってもらえればいいんだと、自分に言い聞かせています。