「どうしてこのデザインにしたの?」に答えられなかった

 それまでは、文化祭のポスター一つとっても、自分がいいと思うものを表現すればみんなに褒めてもらえました。同じような感覚で、最初に任された名刺やロゴのデザインを作ったら、「全然だめ。ゼロからやり直して」と突き返されてしまったんです。そのデザインにした意味を聞かれたとき、私は「かっこいいと思ったから」としか答えられませんでしたが、それが根本的に間違っていた。「デザインは自己主張ではなくて、問題を解決するための手段だ」と言われました。

 今思えばデザイナーとしては当たり前のことですが、そのときの私は、それまでの固定観念を崩されたことがショックでした。でもそこで夢が閉ざされるのは嫌だったし、負けず嫌いなので諦めたくなかった。葛藤しながらも考え方を変えることにして、やっと相手に提案できるレベルに持っていけるようになりました。

念願かなってデザイナーになるも、壁に当たって「一度はデザインが嫌いになりそうだった」と話す村田さん
念願かなってデザイナーになるも、壁に当たって「一度はデザインが嫌いになりそうだった」と話す村田さん

共感できるキーワードは「家族」と「恋愛」

 一つの壁を乗り越えたことで、自分がデザインしたものが形になる楽しさが味わえるようになりましたが、今度は依頼主の事業そのものに共感できないまま仕事をすることがつらくなってきたんです。もちろん共感できる領域もありましたが、そうでない場合には、クライアントを納得させるためだけに小手先でデザインすることになる。このままデザイナーとしてやっていったらそういう機会も多くなるだろうと考えたときに、それは嫌だなと思いました。

 それなら自分はどんな領域だと共感できるのか。「就活」とか「住宅」とか、具体的なキーワードを思い浮かべながら自問自答していったときにたどり着いたのが、「家族」と「恋愛」でした。