宇宙航空研究開発機構(JAXA)で働く小川恵美子さんは、2016年末に打ち上げられた科学衛星、通称「あらせ」の開発チームの一員です。人工衛星の開発は未経験だった小川さんが、知識ゼロからプロジェクトの調整役となるまでの軌跡を聞きました。

衛星開発プロジェクトの「何でも屋」

 私は2016年12月20日に打ち上げられた科学衛星のシステム担当として、プロジェクトをまとめる役割を務めてきました。全体を見渡して、開発に関わるさまざまな人たちと連絡を取り、調整するのが仕事の中心で、プロジェクトに関する「何でも屋」という感じです。打ち上げられた衛星には、のちに「あらせ」という愛称が付きました。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)ジオスペース探査衛星 プロジェクトチーム 小川恵美子さん ※許可を得て撮影しています
宇宙航空研究開発機構(JAXA)ジオスペース探査衛星 プロジェクトチーム 小川恵美子さん ※許可を得て撮影しています

 「あらせ」はジオスペース探査衛星という科学衛星で、ジオスペースとは比較的地球に近い宇宙空間のことです。その中に広がる放射線帯というものを観測するのが「あらせ」の主な目的です。

 「衛星開発のプロジェクト」というと皆さん特殊な仕事だと感じるようですが、実際、特殊なことを行っているかというと、そんなこともないなあと思うんですよね。

 小・中学校の同級生と話したりしても、それほど自分の仕事が他と違うと感じることはありません。友人たちも私とは違うそれぞれの分野で頑張っているからでしょうか。人工衛星やロケットを間近で見る仕事はなかなかないのかもしれませんが、仕事が変わればその仕事でしか見ることができないこと、経験できないことがあるもので、私の場合はそれが衛星だということですね。

 ただ、衛星に触れる作業を行った際はさすがに緊張しました。