宇宙への興味は、1冊の本から始まった

 通常、衛星の組み立てはその道のプロであるメーカーさんに一任しています。そのため、現物に触れる機会は基本的にありません。そのときは振動試験のために一時的にカバーを外して現物に触れる作業があり、先輩から「せっかくだから、やってみたら?」と幸運にも声を掛けてもらいました。

 衛星はとにかく汚れが付いてはいけないので、手袋をして、マスクをして、無塵服を着て。作業時は、どきどきして、手元がぷるぷる震えました。「今、私が外したんだ。宇宙に飛び立つものに触れたんだ」と感動しました。

「昔から、考えていて一番楽しいのが宇宙のことでした」(小川さん)
「昔から、考えていて一番楽しいのが宇宙のことでした」(小川さん)

 小さいときから宇宙が好きで、他の進路を考えたことはなかったですね。宇宙との出合いは、小学校1年生のときに買ってもらった星の本です。その本を、とにかくずっと見ていました。星座のことも載っていましたが、それよりも私の興味を引いたのは「星にも一生がある」ということでした。星は生まれるとやがて爆発して死んでしまう。でも爆発の跡は今も空に見えているんです。面白くて、本の中身を丸暗記してしまうほど繰り返し読みました。

 遠い宇宙で起こっていることへの興味は尽きなくて、流星群が見えるときには、家の屋根に登って一晩中見ていました。とっても寒かったですけど(笑)。

 中学生になってバスケ部に所属しましたが、幽霊部員でした。高校では地学部という部活動があって、そこで石を採りに行ったりしていました。琵琶湖の近くにきれいな水晶の結晶が採れる山があるので、そこまで採掘に出掛けたり。

 どうやら私は、星とか石が好きなんです。一体何に引かれたんでしょうね。