目指すのは「私でもつい欲しくなっちゃう」モノ

 商品開発の時に意識しているのは、みんなが「絶対に欲しい!」と感じるものではなく、その商品に興味のない人でも「なんだか気になる…」と思うものを作ろう、ということです。ふと目に留まって、気になって売り場を行ったり来たりして、結局レジに持って行ってしまうモノってありますよね。そういう商品にしたいんです。

 例えば、UPQの製品にはガラス製の透明なキーボードがありますが、このキーボードが絶対必要なのかと言われると…正直そんなこともない(笑)。でも、そんな私でも、この格好良いキーボードは「なんか気になる」んです。こんなに興味のない私を惹き付けられるのであれば、こうしたガジェットにもともと興味を持っている人は欲しがってくれますよね。だから私が作るのは、「私『が』欲しい」モノではなく、「私『でも』欲しい」モノです。

二手、三手先を考えるから保留にならない

 透明なキーボードや、充電機能を搭載したスーツケース。どこからこうした商品のアイデアが来るのかというと…もう、考えるしかないです。私は自分が心から納得できるまで行動に移すことができないので、腑に落ちるアイデアが出るまで、とことん考え続けます。商品開発会議やブレストで、時間が迫ってくると現時点でのアイデアから選びたくなることがありますよね。でも、そこでもう少しだけ粘ってみる。ふっとアイデアが浮かんでくるのは、考え続けたからこそだと思います。

 そうしてアイデア出しに時間をかけられるのは、他の部分で保留をしないから、ということもあるかもしれません。少しでも仕事を早く進めたいので、どんな時でも、その場で判断をするようにしています。アイデア出しと違って、判断は一瞬でできます。持ち帰って一晩考えるより、即断即決。自分のところで仕事を停滞させたくないんです。

 迷わずに即決できるのは、事前にあらゆる事態を考えているからです。人と仕事をしている以上、うまくいくことばかりではないですよね。当日になって「あれ、コレやってないの?」「思っていたのと違うな」ということもあります。そこを読んで、あらかじめ別のプランも立てておくんです。「ここは上手くいかないだろうな」「もしコレが足りなかったらどうしようかな」と考えられる限りのことは予測しておく。だからこそ、迷わず即行動できるんです。

文/藪内久美子 写真/品田裕美

中澤優子(なかざわ・ゆうこ)

株式会社UPQ CEO代表取締役。携帯電話好きが高じて学生時代は携帯電話ショップでアルバイトをしていた。その経験を生かし、文系ながらカシオ計算機で携帯電話の商品企画に携わる。同社の携帯電話事業撤退に伴い退職し、カフェをオープン。その後UPQを立ち上げ、わずか2カ月で17種類24商品を開発、販売開始した。

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