いい仕事をするには「信頼ポイント」を得ること

 これまでいろんな会社で働いてきたけれど、結局、いい仕事をするための極意はひとつだなと感じています。重要なのは、周りからどれだけ信頼してもらえるか。その「信頼ポイント」が高くなるほど発言力が強まって、周りを巻き込めるようになります。

 言葉に説得力も生まれるから、「あの人が言うなら」とか「彼女にやらせてみよう」とチャンスが増えて、自分のやりたいことができるようになっていく。周囲の期待を集めることが、みんなをまとめる求心力にもなります。信頼ポイントは、ある日突然積みあがるものではありません。一つずつ目の前のことに対し、周りの期待を少しだけ超えたことをしていく。その積み重ねです。

「この人に任せれば仕事が進む」を積み重ねて

 信頼ポイントを集めるのに、肩書やポジションは関係ないと感じています。ソーシャルアプリの「LINE」をたちあげる時も私が中心になってとりまとめていましたが、当時はまだ平社員でした。でも、何か問題があると、みんな私のところに聞きに来ていましたから。

 意識していたのは、プロジェクトの進行具合をみんなで共有できるように「見える化」すること。それによって、「この人がやると物事がスムーズにまとまって次の段階に行ける」と示すことができる。それが積み重なることで、「あいつならやってくれる」となったのだと思います。

 自分のなかで、常に感覚値として「今、どれくらい信頼ポイントが貯まったか」という独自のバロメーターがある気がします。周りに仕事をお願いするときにも、「今、この人に対して、これくらいの信頼ポイント残高を持っているから、頼めばやってくれるかな」と考えながら進めていたり。こうした考え方は、私の仕事のベースにもなっていますね。

文/西尾英子 写真/村田わかな

稲垣あゆみ(いながき・あゆみ)

LINE株式会社 執行役員 LINE企画室 室長。大学卒業後にベンチャーの立ち上げ、「バイドゥ」日本法人を経て、2010年ネイバージャパン(後のNHN Japan、現LINE)に入社。開発を率いたソーシャルアプリ「LINE」は、全世界での月間利用者数が2億1,800万人を超えた。2016年に33歳でLINE最年少執行役員に抜擢された。

この連載は、毎週公開しています。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページはこちら ⇒ 「わたしとシゴト。」