ひらがなをモチーフにしたアクセサリーや、5種類の書体で自分の名前を書くワークショップ、漢字の動きを楽しむウェブサイト。多彩な取り組みで「書」を広めているのが、書家でありデザイナーの國廣沙織さんです。書家という仕事にたどり着くまでは、生まれ育った地元・広島でいろいろな仕事に挑戦するも、打ち込めるものに出会えず苦しい日々を送っていたといいます。國廣さんはどのようにしてライフワークを見つけたのでしょうか。

美しい日本語をアクセサリーにした斬新なアイデア

 「書」を通じて、日本語をもっと身近なものにしたいと思っています。「書」というと、仰々しい掛け軸などが思い浮かぶと思うのですが、それだと少し敷居が高いですよね。もっと自然に、自分の生活の中に「書」が溶け込むような何かをつくりたい。そうして生まれたのが、ひらがなをモチーフにしたアクセサリー「Hiragana」です。

 自分の名刺のデザインを考えていた時に、「くにひろさおり」とひらがなで書くことを思いつきました。何度も試し書きをするうち、すべての文字をつなげてみると美しい形になると気づいたんです。自分のトレードマークにしようとピアスを作ってみたところ、会う人会う人に褒めていただけて、思った以上に大きな反響がありました。アクセサリーとして、さりげなく日本語を身に付けている人が増えたら良いなと思い、商品化に踏み出しました。

最初に生まれた「くにひろさおり」のピアスは、紙の型でつくったもの。くは「久」、ひは「比」、ろは「呂」と、ひらがなの元になった漢字。「仮名文字の美しさを身近に感じてもらいたいと思い、この書体にしました」
最初に生まれた「くにひろさおり」のピアスは、紙の型でつくったもの。くは「久」、ひは「比」、ろは「呂」と、ひらがなの元になった漢字。「仮名文字の美しさを身近に感じてもらいたいと思い、この書体にしました」

 「ありがとう」「うつくしい」「ゆめ」など、現在は13種類の言葉をアクセサリーにして展開しています。言葉を選ぶときは、「心に留めておきたい言葉」と「世界に発信したい日本の言葉」の2軸で考えています。前者なら「ありがとう」「きずな」など、後者なら「とうきょう」「さくら」などがそうです。海外の方にプレゼントして、意味を伝えた時に「こんなに素敵な意味だったのか!」と喜んでもらえるような。ひらがなはとても美しい文字です。日本の方にはその素晴らしさを再発見してもらい、海外の方にはその美しさに驚いてもらう。ひらがなアクセサリーを通じて、一人でも多くの人にそんな経験をしてもらいたいですね。

「ありがとう」のピアス
「ありがとう」のピアス