あえて異分野の情報を取り入れる

 中でも、科学やITなど、あえて違う分野の情報を取り入れるように心がけています。書家の方のお話ばかり聞いていても、先人と同じことしかできません。書家はたくさんいますが、「大勢のうちの一人」になるのではなく、「私にしかできないこと」がしたい。異分野の情報にはそのヒントが詰まっていると思うんです。デザイナーやアーティスト、建築家の方など、さまざまな業界の方のお話を聞きにセミナーに参加したり、本を読んだりしています。話を聞きながら、作品づくりのアイデアやヒントをもらったり、一緒にどんなことができるだろうかと考えています。

國廣さんが身につけているヘアバンドも「書」の作品。大きな布にプリントし、取材当日の朝に切り出してヘアバンドにしたのだそう
ヘアバンドの元になった布をお借りしました

 東京に来て、少しずつ仕事が増えてきても、はじめのうちは「本当に私が『書家』と名乗って良いのだろうか……」と自信が持てませんでした。でも、「作品を家に飾っています」「字が上達しました」などの声をいただくようになって、徐々に書家としての自信がついてきました。自信があるから行動するのではなく、まずは行動。自分にできる範囲で行動してみて、それが相手の心に届けば、自信につながっていくのだと感じます。行動すれば、失敗することもあります。私の場合は、失敗したらひとり反省会を開いて次に生かす。30歳を迎えて、ようやく心のモヤモヤも晴れてきました。

 私の活動のテーマは、自分の作る「書」を通じて「日本語って素敵だな」「日本人でよかったな」と感じてもらうことです。また、書家として活動するうちに、徐々に具体的な目標もできてきました。現在、目標は四つあります。「商品を海外で販売すること」「大河ドラマのタイトルを書くこと」「『とらや』さんのパッケージをデザインすること」「籠中会を10年続けること」。途方もない目標に思えるかもしれませんが、今の自分にできることをコツコツ積み重ねていけば、きっとかなうと信じています。

文/藪内久美子 写真/品田裕美

國廣沙織(くにひろ・さおり)

書家・デザイナー。6歳から18歳まで書道を習い、26歳でその魅力を再発見。書家を志す。海外留学中に個展を開催。帰国後、広島から上京。「書」をより身近なものにすべく、ひらがなをモチーフにしたアクセサリー(http://hiragana.tokyo/)や、5種類の書体を学ぶワークショップ、漢字の動きを楽しむウェブサイトなど、さまざまな取り組みを行っている。
Webサイト:http://www.saorikunihiro.com

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