自ら企画した商品で、売り上げ増に貢献

 3Mには、ビジネスに役立つと考えられることなら、勤務時間の15%を好きな研究に使っていいという文化があり、そこから生まれたヒット商品もたくさんあります。上司の承認や報告の義務も必要ない、あくまで自発的な活動です。私が携わった『スコッチ・ブライト バスシャイン 鏡の水あかクリーナー』もそこから生まれた商品でした。

 きっかけは、技術開発部門の先輩から「こんな面白い研磨材があるんだよ」と声をかけられたこと。類似品の多くは素材にダイヤモンドを使っており、鏡に傷が付いてしまうけれど、この研磨粒子はガラスの素材と親和性が高く、傷を付けずに磨けます。彼の業務時間の15%から生まれた新しい発想に刺激を受け、ワクワクしました。私自身、開発時代に製品化に至らなかった経験があるため、面白い研究を応援したい気持ちも強かったんです。マーケティングで日々データに触れながら調査をしている環境とスキルを生かせば、製品化の可能性を見極められると考えました。

 そこで、私の業務時間の15%を使って、事業部を説得交渉できる材料を収集。技術部門の先輩と一緒に事業化を提案しました。紆余曲折ありましたが、何とか製品化にこぎつけることができたんです。結果的に、商品のカテゴリーを広げられただけでなく、その年のお風呂用クリーニング製品の売り上げを10%以上アップさせることができました

開発、マーケティングを経て広報に

 この経験により、「3Mの素晴らしい商品をもっと多くの人に知ってほしい。私の手で届けてみたい」という思いが高まり、再び社内公募制度を使い、広報に異動を果たしました。

 広報は、人と話すだけでなく、プレス資料など原稿を書かなくてはいけません。言葉に関心はあったけれど、実は私、国語が苦手だったんです。だから、自分にできるのか不安も強かった。でも、開発とマーケティングを経験したことで、「どういうテクノロジーが使われているのか」「どう売りたいのか」という二つの視点で製品を見ることができる。これまで身に付けてきたものが武器になるはずと自分を奮い立たせました。

 広報部門で技術系出身は私だけ。自分にできる伝え方は何だろうと、日々模索しているところです。

文/西尾英子 写真/品田裕美

鵜飼春菜(うがい・はるな)

東京都出身。大学で応用化学を学び、新卒でスリーエム ジャパンに入社。家庭向け医療用品『ネクスケア』の開発に携わった後、クリーニング製品『スコッチ・ブライト』ブランドのマーケティング担当に。2013年1月、社内公募制度を利用し、コーポレートコミュニケーション部に異動。開発やマーケティング部門の経験を生かし、幅広い製品群をPRする。

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