現状を伝え続けることが大切

 たとえば児童相談所に虐待の通告をしても、特に中高生だと今すぐ命の危険があるとはみなされず、親への事実確認や話し合いが必要などと言われてなかなか保護してもらえないこともあります。でも、SOSを出した子どもとしては、その場で保護されなかったら裏切られたと思ってしまう。

 また、子どもが嘘をつくこともありますが、嘘をつくのはそうすることで身を守ってきたからなんです。職員の方も膨大な案件を抱えていて、一人ひとりのためし行動に向き合ったり、じっくり信頼関係をつくる余裕がない。嘘が1つ見つかるとその子自身が疑われてしまうこともあります。

 行政のしくみを変えるにはまず現状を認めてもらうことからなので、当事者の声を講演会などを通して伝えたり、メディアで発信したりして伝えていくことが大事だと思っています。女の子たちからも、体験や想いを伝えたいという声があがり、この夏児童買春の実態を伝える企画展を開催しました。警察や児童相談所に行って、個別のケースについて直接働きかけるだけでなく、世論をつくることによって、少しずつ変えていけたらいいなと。

「私たちは『買われた』展」に展示された、ある少女の「食事ノート」
「私たちは『買われた』展」に展示された、ある少女の「食事ノート」
「私たちは『買われた』展」に展示された、ある少女の「食事ノート」

街中に誰でも休める場所をつくりたい

 活動していくためには資金が必要ですが、今は国や行政からの委託や資金を受けていません。

 たとえば「自殺対策のためなら」と言われてしまうと、それ以外のことに使えなくなってしまいます。必要なことのためにお金は欲しいけれど、用意されたお金の枠でしか動けないようなことはしたくない。だから今は公的なお金はもらわずに、寄付と民間の助成金、啓発活動の事業収入で運営しています。

 行政ではすくいきれないような部分で、フットワークよく動けるのがコラボの意義だと思っています。2015年の6月からは、女の子が駆け込める一時シェルターをオープンさせました。お風呂とご飯と寝床があって、そこに行けば誰かがいるという感じです。暴力や虐待から逃げてくる子もいれば、家では夜は不安で寝られないから昼寝がしたいと来る子もいます。探し出そうとする加害者の執念がすごいので場所は非公表にしていますが、被害者が身を隠さなくてはいけないのはそもそも理不尽なこと。いつかは渋谷などの街中に、誰でも休める場所をつくるのが私の夢です。

文/谷口絵美 写真/品田裕美

仁藤夢乃(にとう・ゆめの)

一般社団法人Colabo代表。1989年生まれ。中学生の頃からほとんど家に帰らず、渋谷で多くの時間を過ごす。高校中退後、明治学院大学に進学。現在は「居場所のない高校生」や「搾取の対象になりやすい青少年」の問題を社会に発信しつつ、当事者の支援を行っている。著書に『難民高校生-絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)など。

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